猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

褐色矮星と惑星のあいだ

 で、その表面温度280度の星の大気組成を調べると、「水」と「メタン」とかいう、地上とか、一部の惑星とかに存在するような物質があるらしい。そうなると、「褐色矮星」と「惑星」、とくに、木星型のガス惑星は、よく似たものということになってきます。
 げんに、上記の記者発表資料にも書かれているとおり、太陽系以外の惑星では、恒星(太陽系の太陽にあたる)のすぐ近くを数日で一回転している、木星よりも大きな質量を持つ「ホット・ジュピター」と呼ばれる型の惑星が見つかっています。この資料によると、ホット・ジュピターの大気を調べるのに、褐色矮星の大気を調べるのが有効だということです。さらに、ホット・ジュピターほど恒星の近くを回ってはいないけれど、やはり地球の内側程度の軌道を回っている木星型惑星も見つかっていたはずです。つまり、褐色矮星ホット・ジュピターの組成は似ている、ということですね。で、ホット・ジュピターはやはりも木星に似ていると推定できるわけですから、そうなると:
 恒星‐すごく軽い恒星‐褐色矮星ホット・ジュピター木星型惑星地球型惑星
と、「星」型の天体がなめらかにつながるということにもなる。地球型と木星型のあいだで「ガス天体かどうか」という区別が切られてしまうかも知れません(まあ地球や金星には濃い大気があるから「ガス天体」でもあるんだろうけど)。
 では、惑星と褐色矮星のどこが違うかというと:
 1. 惑星は、水素はもちろん、重水素核融合もしていない
 2. 生まれの違い―褐色矮星は普通の恒星と同じように星間雲が重力で集まって生まれる、惑星は、その星間雲が集まって原始的な星ができて、その周囲を回転するガスや塵(土埃とか砂粒のようなもの。ダスト。これが現在の地球大気に飛びこむと流星になる)から生まれる。つまり、褐色矮星は星間雲から直接に生まれ、惑星はほかの星が先に生まれてから(生まれる過程に入ってから)できる。
 3. 惑星には天体の中心に核(コア)があるが、褐色矮星はガスだけでできている
というようなところが違うのだそうです。
 でも、「1.」は、褐色矮星でも重水素が尽きてしまうと核融合をしなくなってしまうので、「2.」と「3.」が本質的な違いなのでしょうね。
 しかし、地球も、星間雲から、原始の太陽のまわりを回っていたガスや塵の集まり(原始太陽系円盤とかいいます)を経由してできて、それでこれだけ岩石があるわけだから、褐色矮星が岩石になりそうな物質を持っていてもおかしくはない気はする。たしかに、中心で核融合しているあいだは、中心部はそれなりに熱いはずです――「天ぷらの揚がる温度」などより、はるかに。だから、核融合しているあいだは、中心に岩石成分(珪素とか酸素とかアルミニウムとか鉄とか)が集まることはなく、だからといって吹き飛んでしまうこともなく、恒星の「大気」のなかを循環しているのでしょう。しかし、褐色矮星核融合しなくなったらどうなるのだろう?
 普通の水素が核融合しているような星ならば、太陽と較べてすごく軽い「褐色矮星すれすれ」の星であっても、核融合が終わると、太陽と同じくらいの星と同じように、外側のガスが飛んで行ってしまって、中心部が「白色矮星」として残るそうです。
 では、褐色矮星は? やはり外層のガスは温度が低くなると飛んで行ってしまうの? 重水素核融合でできたヘリウムはやはり中心部に塊になって残るの?
 それとも、珪素、酸素、アルミニウム、鉄のような重い元素が、冷えて中心部に落ちてきて、水素やヘリウムを押しのけて、「核」を作ってしまったりしないのかな?
 もし、そういう進化が起こるとすると、「褐色惑星→ホット・ジュピター型惑星や木星型惑星」という進化があり得るわけです。