猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

今年最後の惑星に関する駄弁

 『天文年鑑』2009年版を買うと、「マケマケ」という天体が加わって「準惑星」が一つ増えたそうです。う〜む、知らなかった。
 と書いて、あらためて検索してみたら、細長い天体「ハウメア」もめでたく「準惑星」認定されたとのことで。知らないうちに、5つになっておられたのだね。
 私は「準惑星」というのは「海王星より遠い天体」(TNO)の全容がもう少し解明されるまでの過渡的な概念ではないかと思っています。
 現在は、「海王星より遠い天体」のうち、冥王星と同じくらいか、冥王星より大きそうならば「準惑星」になり、そうでない天体は、ほぼ球形をしていると推定され、ほかの天体の衛星になっていなくても「太陽系小天体」のままとどめられるという分類は、やはり「暫定的な分類」に思えます。少なくとも惑星科学の研究上はあんまり役に立たないのではないかな? 私はしろうとだから研究界の事情はよくわからないけれど。準惑星冥王星マケマケと、太陽系小天体のセドナとクワオワとで、本質的な違いがあるとはあまり思えないし。まして、小惑星帯の天体で、「準惑星ケレスとそれ以外」を分ける強い理由があるともちょっと思えません。ケレスだけ格上げして、「四大小惑星」の女神たちの女の友情にひびを入れたいとか? でも、もともと仲よさそうとも思えないし……。
 ここでウィキペディアを引くと、「自分の重力でまるくなっているかどうか」がポイントで、ケレス以外の三大小惑星準惑星からはずれるのは、球形であることが確認されていないからのようです。「四大」のうち、小さいジュノー(ユノ)以外は、球形であることが確認されれば準惑星になる可能性もあるとのことです。セドナ・クワオワは「球形」ではないのかな?
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BA%96%E6%83%91%E6%98%9F
 それより、離心率=「楕円らしさ」が高く、いわゆるエッジワース・カイパーベルトから「オールトの雲」附近まで行くようなセドナと、冥王星・エリスなどの違いのほうが本質的かも知れません(あれ、この遠くまで行く楕円軌道はエリスのほうだったかな? エリスの「楕円らしさ」が大きいのは確かだけど)。
 「準惑星」という訳語が決まったとき、私は、それならいっそのこと:
 木星土星:特別惑星/天王星海王星:準特別惑星または快速惑星/水星・金星・地球・火星:惑星/冥王星・エリス・マケマケハウメア準惑星/その他:普通
とでも分ければいいのに、と思いました。いや、「快速」はないと思いますけどね。
 ただ、現状の「惑星/準惑星/太陽系小天体」という分類よりは、「岩石惑星/ガス惑星/低温大型惑星(海王星型)/揮発成分を多く含む小天体=彗星/揮発成分のほとんどない小天体=小惑星」という分類のほうが、たぶん、惑星科学研究上、意味があると思います。系外惑星まで視野に入れたときにはこっちのほうが本質的だと思う。
 ともかく、現状では、その軌道附近にほかの同規模天体がないことが「惑星」の条件になっていますから、もし、木星の軌道上の重力安定点(ラグランジュ点)に木星と同じ大きさの惑星が存在したりすれば、木星でさえ「準惑星」になってしまう可能性があるのです。まあ、ほかの惑星からの摂動もあるなかで、木星と同程度に重い惑星が、長いあいだ木星の重力安定点にとどまっていられるかというと、無理だろうとは思いますけど。
 また、もし「大きさのみ」による「準惑星」の定義を変えるとしたら、「地球からコマと尾の存在が確認できるかどうか」を基準とした「小惑星」と「彗星」の定義も変えなければならないところです。現状では、発見されたときにコマ(淡く輝く彗星大気)も尾も見つからなければ「小惑星」で、もし後にコマや尾が見つかれば「彗星」に分類変えされるという仕組みです。太陽から遠くてコマや尾が発生していなければ、「彗星」と天体の性質が変わらなくても「小惑星」になる。また、もともと彗星だったけれど、コマや尾になり得る気体成分が涸れてしまったらしいものはやはり「小惑星」になる。逆に軌道が円に近くて、「彗星」らしい楕円軌道を回っていなくても、コマがあれば「彗星」です。
 これは「準惑星」以上に天体を見る人間の都合でできた基準です。けれども、この基準をいじろうとすると、小惑星にもいろいろな型の小惑星があるので、それをどう分けるかが難題になってしまう。
 でも、この「小惑星の大分類」は、やはり、「海王星より遠い天体」の解明が進めば、また問題になると思います。そのときにはやっぱり「準惑星」概念の再検討も進むことになるのではないかと思いますが。
 ところで、私は、準惑星には「和名」を決めよう、と思っていて、ケレスは「豊穣の女神」だから「天豊星」とか「豊王星」とか、エリスは諍いの神(でしたよね?)なので「諍王星」とか「邪王星」とかがいいかな、と考えています。「邪王星」とか、この名まえをつけられた天体には気の毒だけど、何か「ファンタジーの心」を刺激していいように思いますけど。マケマケハウメアはどちらも豊穣神なので、「穣王星」とか「穂王星」とかで漢字を使い分けるかな? ところで豊穣神ならば「ホロ」だ! 次の準惑星は「ホロ」にしよう!
 というような話はおいといて。
 先日、本棚から、1970年代のボイジャー土星接近をうけて1980年代初めに松井孝典さん(執筆時の肩書きがまだ「助手」だもんね)が書かれた『パノラマ太陽系』(講談社ブルーバックス)が出てきました。「準惑星問題」どころか、「海王星より遠い天体」の存在さえ知られる前の本で、エッジワース・カイパーベルト(ということばは出てこない)があるとしてもおかしくない、という表現が出ています。この本の時点で発見されている小惑星の数は2000個台です。
 それでも、「どんな惑星系ができるか」というシミュレーションで、0.3天文単位(1天文単位は太陽‐地球の距離)という実在の水星より内側に木星より巨大な巨大惑星ができる可能性が示されていて、けっこう興味深い。もちろん「ホット・ジュピター」はもっと「太陽」に近いわけですけど。
 そのなかで、「年とともに冥王星の推定質量が減少してきて、このままでは1980年代には推定質量が0になる」というエピソードが出てきます。まあ、実際には0になる前に歯止めがかかって、そのかわり「準惑星落ち」してしまったわけだけど。
 これは、いまから考えれば、ある程度は、「冥王星はこういう星だろう」という推定の変遷を表現していると見ていいでしょう。最初は、海王星の軌道の理論値からのずれを説明するために考えられたので、天王星海王星級の大きい質量が推定された。しかし、実際に見つかってみると、それほど大きいわけがないということになり、では、地球と同じような岩石惑星だろうと推定されて(私は中学校のころ「冥王星は岩石惑星だ」と習ったような記憶があるんだけど、記憶まちがいだろうか?)だいたい地球と同じか、小さくとも火星ぐらいと推定された。まさか「月より小さい」とは考えられなかったのでしょう。しかし、「反射率が高そう=小さくても明るい→じゃあ小さいんだ」ということで、どんどん推定の大きさが小さくなっていった、ということのようです。
 ともかく、これでは「海王星の軌道のずれ」は説明できないので、こんどは、現在の惑星公転面から60度も傾いた軌道を逆行している、けっこう大きな惑星があるはずだという説が出たという本も読んだことがあります。現在では、エッジワース・カイパーベルト=「海王星より遠い天体」帯の存在で、その「ずれ」も説明できるのでしょうか?
 今回、発見されたとされるフォーマルハウトの「惑星」は、巨大ガス惑星規模、かつ土星のような派手なリングつきと推定されているようです。しかも海王星の軌道の四倍という遠方を周回しているとされます。系外惑星系で「海王星よりはるかに遠い木星級巨大惑星」が次々に見つかれば、太陽系にもあるいは、という議論が出てくるかも知れません。現在は、「海王星より遠い天体」の分布から、地球よりちょっと小さめの「新第九惑星」(旧第九惑星は冥王星)の存在が推定されているわけですが。
 ところで、「第九まであるはずだったのが、一つがあまりに小さいという理由で第八までになった」というと、私は「太陽系の惑星」とともに「シューベルト交響曲」を思い出してしまう。もともと「第八:未完成/第九:グレイト=大ハ長調交響曲」だったのだけど、当時の「第七」の完成度が低いので順番が見直され、「第七:未完成/第八:グレイト」になったとのことです。しかも「グレイト」を「第七」に入れる説もあったらしく、そのために「グレイト」は「第八」と書かれたり「第九」と書かれたりします(私は見たことがないけれど「第九(第七)」という表記もあったらしい)。
 あと、「第九」というと、マーラーが、有名作曲家(ベートーヴェンシューベルトブルックナーかな?)の交響曲「第九」までしかないのを気にして、自分の交響曲「第九」の番号がつくのをいやがり、九番めになるはずの交響曲を「交響曲大地の歌」」にしたというエピソードも思い出します。しかし、その後に「第九」を書き、「第十」は未完成のままマーラーは亡くなったため、やはり「第九」までしかないことになってしまいました。だから、私は、冥王星は、「第九惑星」でないのなら、「惑星「大地の歌」」とでもすればいいと思ったのですが。その後、少なくともショスタコーヴィッチが「第九の壁」を破ってますから、「第九のジンクス」は通用しなくなりましたが。
 また、ホルストの「惑星」は、作曲が冥王星発見より早かったので「海王星」までしかないのですが(他の作曲家による「冥王星」の補作がある)、結果的に、現状では「地球以外の惑星を網羅している」ことになってしまいました。