猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

月は地球に向かって落ち続けている話

 「落ち続ける話」なんて受験シーズンには書けないね。最近は大学の秋入試とかもあって、一年中受験シーズンだったりするようですけど。
 ところで、月はいつも地球向かって落ち続けているし、人工衛星も地球に向かって落ち続けている。それどこか、地球はいつも太陽に向かって落ち続けている。現在の物理学ではそう考えます。
 人工衛星がいつかは地上に落ちてくるというのは感覚としてはわかるかも知れません。人工衛星の大気圏への突入という事件は、それほど頻繁ではないにしても、ときどき起こっています。でも、月が落ちてくるというのは? たしか、月は、落ちてくるどころか、年々遠ざかっているということを前に書いたのではなかったかな?
 ところが、それでも落ち続けていることには違いないのです。
 ニュートン以来の近代物理学では、力を受けていない物体は、同じ方向に、同じ速さで運動をつづけるということになっています。つまり、一本の直線に沿って同じ速さで動きつづける。もしその「速さ」がゼロならば、ずっと止まっているということになります。
 そして、その運動の速さか向きが変わるとすれば、それは外からの力を受けているから、ということになる。前から引っぱられたり後ろから押されたりすれば速さが速くなるし、逆ならば遅くなる。横から引っぱられたら運動の向きが変わる。
 月は地球のまわりを回っています。正確には、月は、月と地球の重さ(質量)の釣り合う点(共通重心)を中心に回っているし、さらに正確に言えば、月も地球も太陽やほかの惑星の引力の影響を受けるので、もっと複雑な動きをするのですが、それでも、大ざっぱには「月は地球のまわりを回っている」でいいでしょう。
 「回っている」――ということは、直線に沿って運動していません。
 直線に沿う方向から、いつも地球のほうにずれて動きつづけるから、月は地球のまわりを回るのです。
 直線に沿って運動していないということは、力が働いているということです。つまり、月は、いつも地球の重力に引っぱられて、地球のほうに動く向きが変わっている。「重力に引っぱられて向きが変わる」ことを「落ちる」というのですから、「月はいつも地球に向かって落ち続けている」ということになるのです。
 ……はい?