猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

女の子どうしの友情

 今回の記者発表で何回か出てきた話題が「女の子どうしの友情」ということでした。今回は桃井はるこさん作詞・作曲の「友達になろうよ」という曲が入っています。


 じつはもともと(桃井はるこさんが)すごく好きなんですね。あの、一人の女性としても、アーティストとしても、あのブレなさ、ゆるがなさ――すごいかっこいいなと思っていて、で、いつか、モモーイに、モモーイから見たわたしを歌にしてもらいたいな、ってずっとて思ってたんですね。

 女の子どうしの友情を描いていて、で、たとえば、世のなかにはたのしいことがいっぱいあって、恋に夢中になるのもいいけど、友だちもすごくたいせつだよねっていう、モモーイならではのすごくすてきな視点だったんですね。なので、ほんとに、何の文句もなく、もう、そのまんま受け取って、拝みながら歌わせていただきました。
 試聴盤に入っていたものを聴くかぎりでは(「かぎり」というのは、全曲は入っていないので)、積極的で、聴きようによってはなかなか刺激的でトリッキーな歌詞の曲のように思いましたが。まあ、桃井はるこさんらしい、依頼した甲斐のあった曲だということでしょう。
 で、今回は、池澤春菜さん自身の作詞の曲は一曲だけで、それが「ジェルソミーナとわたし」という曲です。この曲も「女の子どうしの友情」の曲ということです。ジェルソミーナというのは、『道』というイタリア映画の主人公の女の子なのだそうで、

 で、それは、ジェルソミーナっていう女の子が、えー、相棒の男の人といっしょに旅をしていて、サーカスに入ったりとか、最後はすごく悲しい別れになっちゃうんですけど、とにかくものすごくピュアで、まっすぐな子なんです。あの、どんなに虐げられても、その道の先に必ずいいことがあるから、わたしは歩いていけるっていうような、なので、えぇ、この曲は、わたしのなんとなくのイメージでは、こう、寄宿舎の部屋で、女の子どうしがいっしょで、で、「また恋をして、またふられちゃったの? しょうがないね。でもだいじょうぶ、わたしはとりあえずいるじゃない。また次の恋に出会えるわよ(最後のほうにむけて次第にちょっとキャラクター声になっていた感じです)」――って、夜通し話しながらなぐさめてってあげるような、そんなイメージだったんですね。で、そのときに、どんな名まえをその相手の女の子につけてあげたらいいかな、っていうのはずっと考えてて、いろいろ書いてて、そのなかで「ジェルソミーナ!」って思ったときに、「あ! この子はそういう名まえだ、この子はジェルソミーナだ」って、なんかこうストンと落ちてきたんですよ。なので、「ジェルソミーナとわたし」は、彼女にお話をしているような、もう、またふられても、それは、きっと、次に出会う人に出会うために一人になったんだから、かならずまた二人になれるからだいじょうぶだよ、って、こう、しゃべりかけているような歌になりました。
ということでした。
 この説明を聴いてビリー・ジョエルが「ローラ Laura」という曲について言っていたことを思いだしたのは私だけ……かも知れないですね。もう四半世紀前の話だものね。
 えーと、それは、大略、「この曲は、曲に出てくる女の子を最初は「だれか(someone)」にしていたのだけれど、それではうまく曲にはまった感じがしない、ところが、ふとローラという名まえを思いついて、「ローラが……」と歌ってみるととても曲にぴったりだと感じた。それでこの曲は「ローラ」というタイトルになった」というものでした。ビリー・ジョエルのローラははた迷惑でわがままそうな都会の女の子で、春菜さんのピュアなジェルソミーナとはぜんぜん違うけれど、名まえをつけて固有名詞を与えたとたんに、その女の子が身近に、活き活きと感じられてくる、というところは似ていて、それはすごく興味深いと思いました。
 今回はすごくポジティブな曲も入っているということで、「Make Me Happy」(5曲め。「友達になろうよ」の次。松浦有希さんの曲)という曲は

 いっしょにしあわせになって、いっしょに宇宙の果てまで行こうよ、いっしょだったら、えー、どこまででも行けるよ、っていう、すごくポジティブな明るい曲なので、私、あの、ぎっくり腰になったりとか、ま、いろいろありましたけど、いまみんながこうやって集ってくれている姿を見て、だいじょうぶだと確信しました
ということでしたが、一方では、悲しいとき、つらいときに慰めてくれるような曲もあるということです。慰めてほしいと思ったときには「曇り空と朝」(9曲め。ラストで、「求む歌詞!」の入選作「光と雲のシンフォニー」の前)を聴いて欲しい、

 これは、あのレコーディングのときに(プロデューサーの)小石川嬢がひそかに涙ぐんでたというぐらい、非常にせつない歌詞なんですけど(「逆に涙にくれませんか?」―村崎さん)、いや、でもほら、泣くだけ泣いたら、落ちるところまで落ちたら上がれるんだよ!(「オイオイオイ」―村崎さん)いや、でもね、ほら、辛いことがいっぱいいっぱいあったけど、でも、顔を上げてぼくは歩いて行くよ、っていう歌なので、あの、途中は辛いかも知れませんが、最後はかならず、上がれます。
ということでした。ちなみに、質問へのお答えの感じでは「元気づけてほしいときの曲」もあるようです。たのしみにしていよう。
 ところで、今回の記者発表で、作者陣に関する大きな発表としては、桃井はるこさんとサエキけんぞうさんが参加しておられるということがありましたが、Confetti に参加しておられた松浦有希さん(2曲)と『光の花束』の Coorierino さんも引き続き作者陣に参加しておられます。「曇り空と朝」は rino さんの曲で、メランコリックだけれどもメロディーの美しい、ほんとに rino さんらしい曲だと思います。
 春菜さんはこの日はぎっくり腰だったり、ちょうどそのころに大切なお祖母さんをなくされたりで、辛いこともあったところでしたが、「友達になろうよ」や「ジェルソミーナとわたし」は、「辛いこともあるけれど、そんなときには女の子の友だちが慰めてくれたり、元気づけてくれたりで、力になってくれる」というコンセプトの曲のようで、今回のアルバムには「女の子どうしの友情」というテーマもあるのかなと思いました。『マリア様がみてる』の世界の印象もあるし、春菜さんの日記にときどき出てくる妹さん(「妹ちゃん」)のイメージもあるのかな、と想像してしまったりもします。ちなみに、今回の「合同記者発表」は、やはり女性声優のイベントということで男性比率が高かったのですが、女性の方も参加されていて、しかも積極的に質問しておられたのも印象的でした。
 ところで、自ら演じる役について

 なんかこう、ひとつひとつの節目節目で、わたしも役に助けられてるし、役もわたしのその経験があったことによって、もう、よりいっそう、こう深みを増してみたいな、そういうすごい偶然をわたしはたくさんたくさん経験してきているので、もう、どれというわけでもなく、一個ずつにちょっとずつ魂を込めて、はめ込んで、みたいな感じはしております。
と語っておられましたが。
 ぎっくり腰に悩む少女の役がタイムリーに来ていたりして……。
 いや、もう治られたと思いますが、おだいじになさってください。