猫も歩けば...

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「旧太陽暦」の話の続き

 アトリエそねっと謹製2020(令和2)年カレンダーには、太陽暦、通常の「旧暦」とともに「旧太陽暦」を記載しています。
 これは、立春を1月1日とし、太陽の位置が30度進むごとに(=太陽のまわりの地球の位置が30度進むごとに)次の月に移るという規則で作られた暦で、具体的には、「二十四節気」の奇数回め=狭い意味での「節気」が来る日を次の月の1日にしています。
 ……というのがこれまでのあらすじでした。
 二十四節気が何月何日の何時何分に来るかは、国立天文台が「暦要項」という文書で発表しています(http://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/yoko/)。
 いまの日本には、公式には旧暦はないことになっているので、国立天文台も旧暦はサポートしていないことになっています。しかし、日本で伝統的に使われてきた二十四節気はいまも国立天文台が発表しているのです。ほかにも、土用(の入り)、節分、お彼岸(の入り)、八十八夜なども発表しています。「日本の生活に深く関係しているから」という理由でしょう。
 国立天文台は月の満ち欠けも発表しているので、旧暦のルールさえ知っていれば、国立天文台のデータで旧暦を作ることができます。
 それで、国立天文台の発表している二十四節気のデータをもとにすれば、具体的に2020年の「旧太陽暦」がどうなるかというと:

 前年
 12月1日 小寒(330度):1月06日 6時30分
 2020年
 1月1日 立春(0度):2月04日 18時03分
 2月1日 啓蟄(30度):3月05日 11時57分
 3月1日 清明(60度):4月04日 16時38分
 4月1日 立夏(90度):5月05日 9時51分
 5月1日 芒種(120度):6月05日 13時58分
 6月1日 小暑(150度):7月07日 0時14分
 7月1日 立秋(180度):8月07日 10時06分
 8月1日 白露(210度):9月07日 13時08分
 9月1日 寒露(240度):10月08日 4時55分
 10月1日 立冬(270度):11月07日 8時14分
 11月1日 大雪(300度):12月07日 1時09分

となります。これだけだったら、「普通の太陽暦から1か月と4~8日差で推移しているな~」と感じる程度ですが、一か月の日数を数えてみると:

 前年
 12月 29日
 2020年
 1月 30日
 2月 30日
 3月 31日
 4月 31日
 5月 32日
 6月 31日
 7月 31日
 8月 31日
 9月 30日
 10月 30日
 11月 29日

となります。旧太陽暦では、前年の12月と2020年11月は一か月が29日しかないのに対して、旧太陽暦5月は32日もあります!
 これは、地球の軌道が正確な円ではなく、わずかに楕円になっているからです。楕円だと、30度ごとに区切っていくと、楕円の円周上の長さはどうやっても一定になりません。しかも、楕円軌道のばあいは、「ケプラーの法則」によって、地球が軌道上を進む速さも一定ではなくなります。
 地球は、楕円軌道の長いほうの軸の一方の端に来たときに太陽にいちばん近づき(この点を「近日点」といいます)、その反対側の端に来たときに太陽からいちばん遠ざかる(「遠日点」といいます)ことになります。太陽に近いときには地球の動きが速く、太陽から遠ざかると地球の動きは遅くなります。天動説的に言えば、太陽が地球に近いときには太陽の動きが速くなり、太陽が地球から遠いときには遅くなります。
 地球が太陽にいちばん近づく(近日点を通過する)のが(普通の太陽暦の)1月の初めごろ、遠ざかる(遠日点を通過する)のが7月の初めごろです。したがって、普通の太陽暦の12月から翌年1月ごろにあたる「旧太陽暦」の11月と12月は太陽の進みか速く(地動説でいえば地球の公転が速く)、30度進むのに29日しかかかりません。これに対して、普通の太陽暦の6~7月ごろにあたる「旧太陽暦」の5月前後は太陽の進みが遅く(地動説でいえば地球の公転が遅く)、30度進むのに32日かかるのです。
 「29日しかない月」は、普通の太陽暦グレゴリオ暦)に「28日しかない月」があるので別に驚きませんが、「5月32日」というのが出現するとちょっと驚きます。少なくとも私は「えっ?」となりました。
 ちなみに、「旧太陽暦」6月1日にあたる小暑は2020年7月7日の午前0時14分なので、もし時間が15分前にズレていれば、「旧太陽暦」の6月1日は普通の太陽暦の7月6日になり、「旧太陽暦」の5月は31日で収まります。しかし、このばあい、15分前倒しにしても立秋(旧太陽暦7月1日)は8月7日の午前9時50分頃になるだけで日付が動かないので、こんどは6月が32日になってしまい、「32日の月」が出現することにかわりはありません。