猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

水の「特別さ」

 ずっと水の化学的性質の話を続けてきて、前回でようやく(強引に)「水と生命」の話題に戻りました。
 それで、前回の最後のほうで、水の「特別さ」として:
 (1) 分子が小さいこと
 (2) 分子に極性があること
の二つを挙げたと思います。
 水の分子は、極性のある物質やイオンにはすぐに結びついて溶かしてしまうし、極性があまりない物質でも分子の隙間に入りこんで、その分子に「水にくっつきやすい部分」(親水的な部分)があれば、そこにくっついてしまう。その分子に「水にくっつきやすい部分」が多くあれば、その物質も溶かしてしまいます。
 私たちの世界は、「水がある」ことを前提にできているので、水にいろいろなものが溶けて便利だなと思っていますが、「水がない」ことを前提にできている世界にとっては、水というのは何でもかんでも溶かしてしまう超危険物質に見えるのではないでしょうか。
 そして、水の「特別さ」として、もう一つ
 (3) 宇宙のなかで、比較的できやすい物質だ
ということがあると思います。
 水は水素と酸素からできています。水素は宇宙ができたころから存在する物質です。酸素は、その宇宙で星ができて、その星がある程度成長しないと生まれない。しかも、ある程度は重い(質量の大きな)星でないと酸素はできませんし、その星が輝くのをやめて内部の物質を宇宙にばらまかないといけない。でも、宇宙では、内部に酸素のできる重い星のほうが寿命が短く、内部でできた「重い」物質を早めに宇宙にばらまいてくれます。だから宇宙には水素やヘリウムほどではないけれど酸素も多い。
 しかも、水素も酸素も、それぞれほかの物質とくっつきやすい性質を持っています。
 酸素というのは、本来はわりと「危険物質」です。何にでもくっついてそのものを「酸化」してしまう。だから、水素と酸素が出会うと、比較的簡単に水ができてしまう。で、その水が、ほかのものを溶かしやすい性質を持っているのです。