猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

2009-05-01から1ヶ月間の記事一覧

惑星ができる過程の複雑な事情

太陽系の木星や土星自体が、なぜもっと内側まで落ちて「ホット・ジュピター」にならなかったか自体が、よくわかっていないそうです。原始惑星系ができていく過程は: http://subarutelescope.org/Pressrelease/2004/04/18/j_index.html#fig1 に出ています。…

巨大惑星はなぜ中心星の近くまで「落ち」ない?

もし、巨大惑星ができたころに原始惑星系円盤が残っており、それが切れ目のない円盤だったならば、巨大惑星は中心星のすぐそばまで落ちて「ホット・ジュピター」になる。ということは、巨大惑星が「ホット・ジュピター」になっていないのは、円盤に切れ目が…

「巨大惑星の投げ出し」という「別解」

「別解」を考えてみることもできます。巨大惑星が形成されたのは、現在の遠い軌道ではなく、もっと中心星に近いところだった。たとえば太陽系の木星とそう変わらないぐらいの距離の場所だった。ところが、他の天体との引っぱり合いの結果、惑星系の外側まで…

「帯状の輝き」が地上を照らす世界

ということは、フォーマルハウトや恒星 HP 8799 やがか座ベータ星の周囲の「塵の円盤」にある塵の分量は、太陽系の小惑星帯よりもずっと多い。たぶん、水星と金星と地球と月と火星がぜんぶ「塵」に戻った分量よりずっと多いのではないでしょうか。 フォーマ…

遠方巨大惑星のある惑星系はどうやってできたか?

さて、では、気を取り直して、外側に巨大惑星が回り、その内側に幅の広い「塵の円盤」があるという惑星系はどのようにできたかを考えてみましょう。まず標準的なモデルを考えてみます。 最初に塵とガスでできていた原始惑星系円盤が、ある段階の「微惑星」を…

「塵の円盤」をめぐる誤解

フォーマルハウトの惑星と HR 8799 の惑星は、どちらも、中心星(恒星、自分で輝く星)が「塵の円盤」をいまも持っているということです。 私は、前の日記を書いたときまで、「塵の円盤」というのは「原始惑星系円盤」がそのまま残っているものだと誤解して…

「遠方巨大惑星」から惑星系の成立を考えてみたり

前回の「新発見の系外惑星」のお話の続きです。

新発見の系外惑星は「近頃の若いやつ」らなのか?

だから、フォーマルハウトの惑星やHR 8799 の惑星系では、太陽系ではあり得ないほど中心星から離れたところで巨大惑星が形成されたわけです。それだけ原始惑星系円盤に含まれている物質が多かったということでしょうか。 「原始惑星系円盤は時間が経つと消滅…

なぜそんな「遠く」に巨大惑星があるのか?

さて、では、中心星から海王星軌道の数倍も離れたところに巨大惑星が回っている、しかも、その内側には「塵の多い円盤」が存在するという発見の意味を考えてみましょう。 惑星系形成の理論だと、塵とかガスとかが多い「原始惑星系円盤」があって、そのなかで…

「半月」状態の惑星をよく見つけた!

昨年11月に発見されたフォーマルハウトの惑星とペガスス座 HR 8799 の惑星には共通点があります。それは: ・ 中心星(恒星)の周囲に塵(土ぼこりのようなもの)の多い「円盤」があるということ; ・ 海王星軌道のずっと外側を回る「遠方の惑星」であるとい…

新発見の系外惑星について

昨日の話の続きです。

「コールド・ジュピター」のある惑星系

さて、ハッブル望遠鏡が発見したフォーマルハウト(みなみのうお座、一等星、秋の南空で目立つ星)のばあいも、今回の HR 8799 のばあいも、大きい塵(ダスト、土ぼこりみたいなもの)の円盤に囲まれている恒星でした。 フォーマルハウトの惑星が中心星(フ…

今回の発見

今回の発見は、すばるの先を越した観測のうち、ケックとジェミニ(北)が観測していた系外惑星が、すばる望遠鏡が2002年に撮影した画像に写っていたことが確認されたというものです。写っていたのは、ケックとジェミニのチームが撮影した HR 8799 という星(恒…

ちょっと悔しかった話

系外惑星の直接撮影を目標の一つにしていたすばる望遠鏡が、まずハッブル宇宙望遠鏡に先を越され、続いて、ケック望遠鏡とジェミニ(北)望遠鏡にも先を越されたのを知ったときには、やっぱり正直に言って悔しかった。 もちろん、高性能の望遠鏡を使った観測チ…

すばる望遠鏡による系外惑星撮影成功

今回はジョン・ロックの『統治二論』にまつわるお話はお休みして(ということは、まだつづく……予定です)、すばる望遠鏡による系外惑星撮影成功についてです。 すばる望遠鏡のページ:http://subarutelescope.org/Pressrelease/2009/05/21/j_index.html アス…

続き

この回は、「「自由」対「専制」という図式はどこでできたか?」 http://d.hatena.ne.jp/r_kiyose/20090601 へ続きます。

「文明」、都市、社会契約

そして、日本語で「文明」と訳されている civilisation(civilization) は、もともと「 civil になること」という意味です。「civil」は、前に書いたように都市 civitas (キウィタス)の形容詞ですから、「文明」とは「都市的になること」……のはずです(英語…

「都市的な国家での政治」の構想

ともかく、人間が「都市」に住むようになり、「自然の猛威」から遠ざかる一方、「人間どうしの交わり」が人間生活の基本になると、「自然状態」のままではいられなくなります。それが「社会状態」なんだと考えればよい。 「社会状態」では、「自然状態」が「…

「人間と人間の交わり」が主要な社会

けれども、私は、それよりも、人間が都市に住むようになって(または住んでいるところが都市的な場所に変化して)、「人間と人間の交わり」が人間生活の多くの部分を支配するようになることが「社会状態への移行」だと考えるのがいいと思います。 つまり、「…

「社会契約論」の枠組み

ホッブズ、ロック、ルソーの「社会契約論」は、内容はそれぞれ大きく違いますが、 ・人類は、いまや、進歩・進化して「自然」状態から「社会」状態へと移った、または移りつつある; ・その人類には、「自然」状態のままの支配ではなく、「社会」状態に適し…

「コモンウェルス」の「都市」性

ひきつづきジョン・ロック/加藤節(訳)『統治二論』の後編についてです。 ジョン・ロックのばあい、「コモンウェルス commonwealth 」は古典時代ギリシアの都市 polis をモデルにしていると書きました。 ギリシアの「ポリス」はまさに「都市」だし、それに相…

女性の「政治」参加はあり得るのか?

ところで、ロックのコモンウェルスの構想で、大人の女性がその「政治」に参加できるかどうかは、私がひととおり読んだ印象でははっきりしませんでした。 古典時代のギリシアの都市国家では女性の政治参加はあり得なかったので、ロックのコモンウェルスがその…

「コモンウェルス」の「政治」から排除される人たち

ロックは、コモンウェルスの国内に「平等でない関係」そのものはあってもかまわないと考えています。たとえば、ロックは、国王の権力を「家父長の絶対権力」と解釈するフィルマー卿を厳しく批判する一方で、家庭のなかでの親と子の上下関係は認めています。…

「コモンウェルス」とは何か?

ところで、 common は「共通の、共有の、庶民の」という意味で、 wealth は「富」です。このことばを知って以来、なぜ「国家」が「共通の(庶民の)富」なのか私にはずっとわからなかった。これが res publica (レース・プブリカ)というラテン語の英語訳で…

「政治」が存在するのは commonwealth だけである

ジョン・ロック/加藤節(訳)『統治二論』後編の話を続けます。 ロックの議論では、王が「神」として人間を支配する国家や、王が人びとを「持ちもの」(奴隷)のようにこき使う国家、王が「親」のように国民の世話をする国家などには「政治」(「都市的なこと…

こんどは「政治的」のほうに注意が必要かも

ただ、では、後の「市民社会」論的な発想がロックにはまったくないかというと、そうではないようです。だいたい、「自律的な市民社会」が「国家」に対抗するという構想自体が、「支配者が、人民との契約に反して、義務を果たさなかったり、悪いことをしたり…

「civil」と「political」、「国家」と「社会」

さて、 civil と political が同じ意味だということは、語源的に考えれば納得がいきます。 古典時代のギリシア(ギリシャ)の都市国家が polis (ポリス)です。ギリシア語では「ポリス」はただの「都市・都会・みやこ」の意味で、現代ギリシア語でもこの意…

小田実と日本の「市民」論

このような「市民」論の発想は私は小田実さんの本で知りました。社会的にみても、日本社会で「市民」ということばにくっついているさまざまな感覚が成り立ったのは、小田実さんや、小田さんといっしょに「ベ平連」の活動をしていた人たちの影響は大きかった…

「civil」と「political」

さて、最初に、今回の翻訳での訳語について思ったことを書いてみたいと思います。 まず、 civil と political についてです。 この『統治二論』の「第二論」は、これまで普通「市民政府論」と呼ばれてきました。英語では civil government です。ところが、…

ジョン・ロックと「市民」と「政治」

前回に引き続いて、ジョン・ロック/加藤節(訳)『統治二論』(岩波書店)についてです。 やっと「第二論」を読み終わりました。「ロックの『市民政府論』」と呼ばれ、広く知られている部分です。この部分も、「第一論」に引き続き、フィルマー卿を含む王権神…