猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

巨大惑星はなぜ中心星の近くまで「落ち」ない?

 もし、巨大惑星ができたころに原始惑星系円盤が残っており、それが切れ目のない円盤だったならば、巨大惑星は中心星のすぐそばまで落ちて「ホット・ジュピター」になる。ということは、巨大惑星が「ホット・ジュピター」になっていないのは、円盤に切れ目があって、そこで中心星に向かって落ちるのが止まったからということ……でいいんだよね?
 では、円盤になぜ切れ目ができるかというと、私にはよくわかりません。一つのできかたとして、そのさらに外側に大きな惑星があって、その内側でその惑星の引力の影響を受けやすいところが切れ目になってしまうことが考えられます。土星の輪の「カッシーニの間隙」などがそうしてできたと考えられています(そのはずなんだけど……)。ただ、それだと、「引力で切れ目を作った外側の巨大惑星は、なぜ中心星まで落ちて行かなかったか」という説明がまた必要になってしまう。
 また、巨大惑星自身が、あまりに巨大だったため、自分の軌道の内側のガスや塵を引力で引きつけてしまい、その部分の円盤に隙間ができてしまったという説明もできるかも知れない。ただ、そういう現象が必ず起こるならば、どんな巨大惑星も「ホット・ジュピター」になる前に、自分自身でまわりの塵やガスを引き集めて落ちるのを止めてしまうはずです。ところが、実際には「ホット・ジュピター」がいくつも存在するのですから、必ず「落ちるのを自分で止める」とも言えない。
 がか座ベータ星の周囲の「塵の円盤」の観測によると、「塵の円盤」のなかにも、塵の濃いところと塵のとくに少ないところがあるようです。そういう濃淡が、「微惑星からまた塵に戻った塵の円盤」だけではなく、原始惑星系円盤にもあるとしたら、その「塵のとくに少ないところ」で巨大惑星が中心星に向かって落ちるのが止まることはありうる。
 さらに、原始惑星系円盤が、普通ののっぺりした円盤ではなく、「変な形」の円盤だとしたら、巨大惑星の「落ちかた」ももっと複雑なものになるはずです。そして、前にも何度か書いたとおり、「変な形の円盤」は現実に観測されています。
  ドーナツ型 おうし(牡牛)座 GG星(GG Tau)
 http://subarutelescope.org/Introduction/instrument/j_CIAO.html#GGTau
 ドーナツといってもいろんな形のドーナツがありますが、これはまん中に穴の開いた形の「よくあるドーナツ」のかたちです。
  うずまき型 ぎょしゃ座AB星(AB Aur)
 http://subarutelescope.org/Pressrelease/2004/04/18/j_index.html
  「バナナが二本」型 恒星 HD 142527(どこにあるの?)
 http://subarutelescope.org/Pressrelease/2006/06/27/j_index.html
 これは「食べかけのドーナツ」みたいな感じ?