猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

鈴木由美『中先代の乱』について(8)―光厳上皇像の転換―

この本の大きな特徴の一つは「意欲的で積極的な光厳上皇」像を打ち出したところでしょう。 何に意欲的で積極的だったかというと、持明院統の存続と安定について、です。 従来、光厳上皇というと、落ち着いていて、無欲で、まわりの情勢に振り回されて一生を…

鈴木由美『中先代の乱』について(7)

前回から間があいてしまいました。 西園寺公宗陰謀事件と中先代の乱で、公宗と時行は連携していたのか? 著者が示す連携説の根拠の第一の根拠は、中先代の乱をうけて公宗が(事実上)処刑されていることでした。これについては、私は、前回書いたように、「…

鈴木由美『中先代の乱』について(6)

ところで、この本では、中先代の乱は、その直前に起こった西園寺公宗(きんむね)陰謀事件との連携があった、としています。 西園寺家というと、ひとによって非常にイメージの違う一族で: (1)中世史を学んでいる人、中世史ファンにとっては、西園寺家という…

鈴木由美『中先代の乱』について(5)

なぜ北条時行をはじめとする北条与党が南朝側を選んだか? それはこの時代をめぐる重要な問題につながっているのかも知れません。 その問題とは。 「建武政権を継承したのは、足利幕府体制なのか、南朝なのか?」という問題です。 普通は南朝だと思いますよ…

鈴木由美『中先代の乱』について(4)

鈴木由美『中先代の乱』(中公新書)には、中先代の乱の後、北条時行やほかの北条一族がどうしたかも描いてあります。 中先代の乱後、北条時行は南朝側で戦った。 しかも、ほかの北条一族(北条与党)の反乱も南朝側で戦った。 でも、南朝って後醍醐天皇で、…