猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

遠方巨大惑星のある惑星系はどうやってできたか?

 さて、では、気を取り直して、外側に巨大惑星が回り、その内側に幅の広い「塵の円盤」があるという惑星系はどのようにできたかを考えてみましょう。まず標準的なモデルを考えてみます。
 最初に塵とガスでできていた原始惑星系円盤が、ある段階の「微惑星」を生み出すところまで進化する。
 そして、その外側では、原始惑星系円盤の塵が大型惑星を形成し、ガス成分も引き寄せて木星型の巨大惑星ができる。または、中心星(恒星。太陽系の太陽にあたる)から遠いところならば、巨大な氷の塊ができて、その氷の塊にガスが引き寄せられるという成り立ちもあり得るでしょう。
 ところが、内側では、せっかく「微惑星」の段階まで成長した原始惑星系円盤が、惑星系を作るところまでいかず、微惑星どうしが衝突を起こしてまた「塵」に戻ってしまう。そして、濃い塵の円盤が形成されるというわけです。
 これは私たちにとっては怖い「設定」です。もしかすると、太陽系でも同じようなことが起こりえたかも知れない。木星の内側で、わりと大きく成長していた微惑星どうしがぶつかり合って、現実の太陽系のように水星・金星・地球(+月)・火星に成長するのではなく、破壊的衝突を繰り返したかも知れない。そうすると、「木星より内側はぜんぶ小惑星帯」になっていた可能性もある。実際の太陽系では、たとえばもとの地球と別の原始惑星がぶつかって地球と月ができるという「建設的な衝突」が起こって、小惑星帯以外には無事に地球型惑星があるわけですが、そうはならなかったかも知れないのです。いま、地球で暮らしている私たちとしては、何がその命運を分けたのかはもっと知りたいところですね。
 ただ、フォーマルハウトや恒星 HR 8799 やがか座ベータ星のばあい、遠方からその「塵の円盤」が見えるほど「塵」が濃いという特徴があります。
 この塵の円盤は、太陽系で言えば、火星と木星のあいだの小惑星帯や、海王星より遠くの小惑星帯「エッジワース・カイパー・ベルト」に相当するのでしょう。けれども、数十光年ぐらいの距離からすばる望遠鏡ぐらいの性能の望遠鏡で太陽系を観測すれば、太陽のまわりの小惑星帯やエッジワース・カイパー・ベルトが観測できるかというと、おそらくできない。太陽のすぐ近くの地球から見ても、ともかくも小惑星が発見されたのは19世紀、それが「帯」になっていることがわかったのはたぶん19世紀後半のことのはずです。すぐ近くから見てその程度にしか見えないものが、何十光年も向こうから見つかるわけがない。