猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

「政治」が存在するのは commonwealth だけである

 ジョン・ロック/加藤節(訳)『統治二論』後編の話を続けます。
 ロックの議論では、王が「神」として人間を支配する国家や、王が人びとを「持ちもの」(奴隷)のようにこき使う国家、王が「親」のように国民の世話をする国家などには「政治」(「都市的なこと、都市に関すること」)は存在しないことになっていました。つまり、支配者と支配される者の関係が、「神と人間」や「主人と奴隷」や「父と子」などの関係をもとにしているような支配は「政治」ではないということです。
 では、「政治」がある「国家」とは何か。それは、人民のあいだに最初から「父と子」や「主人と奴隷」のような上下関係がなく、「国家」が「人びとの共有物」、「みんなの公共のもの」であるような「国家」です。これをロックは「コモンウェルスcommonwealth と呼んでいます。
 このコモンウェルス commonwealth ということばはホッブズの『リヴァイアサン』でも使われています。ホッブズの議論はロックとはいろいろなところが違いますが、人びとが契約を通じて国家を形成するという点は同じです。この国家をホッブズコモンウェルス commonwealth と呼んでいる。