猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

なぜそんな「遠く」に巨大惑星があるのか?

 さて、では、中心星から海王星軌道の数倍も離れたところに巨大惑星が回っている、しかも、その内側には「塵の多い円盤」が存在するという発見の意味を考えてみましょう。
 惑星系形成の理論だと、塵とかガスとかが多い「原始惑星系円盤」があって、そのなかで塵のかたまりが「微惑星」へと成長し、その成長を何段階か繰り返して惑星ができるという過程が考えられていたはずです。そして、最近の理論だと、もしその原始惑星系円盤のなかで巨大惑星ができれば、それは原始惑星系円盤の塵やガスとの摩擦でどんどんブレーキをかけられ、中心星に近いところに落ちていき、ついには中心星のすぐ近くを回る「ホット・ジュピター」になるということになっていたはずです。
 ところが、フォーマルハウトや HR 8799 のばあい、塵の円盤が残っていて、その外側、太陽系でいうと海王星よりはるか外側を巨大惑星が回っている。
 まず、太陽系では、海王星より外側では「惑星」はできなかった。海王星の外側の「エッジワース・カイパー・ベルト」の天体(海王星より遠い天体、太陽系外縁天体)にも、海王星より内側でできて、できた後ではね飛ばされて遠いところに行ってしまった天体があると考えられています。さらに、天王星海王星も、もっと内側でできて、外に移動したという説も読んだことがあります。
 なぜ円盤の外側では惑星ができにくいか、とくに巨大惑星ができにくいかというと、まず、円盤の外側は円盤の回転速度が遅いので、塵どうしがくっついたりぶつかったりする機会が少ない。あと、たしか、温度が低いと雪がさらさらになってくっつきにくくなるのと同じように、「原始惑星系円盤」の塵にも「温度が低くなるとくっつきにくい」という特性があったのではなかったでしょうか。これはうろ覚えなので正確かどうかわかりませんが。
 太陽系でも、天王星海王星の場所であんなに大きい惑星ができるはずがないという計算が過去にあったのを覚えています。もっとも、惑星科学は文字通りの「日進月歩」なので、その計算がいまも有効なのかどうかはわかりません。もしその計算がもう時代遅れなのだとしても、海王星の数倍向こう側で、木星の数倍という巨大惑星が形成されるというのは、太陽系ではあり得なかったことです。
 もっとも、太陽系で、海王星軌道の数倍向こうに、木星の数倍の規模の巨大惑星が回っているのが見つかったら話は別だけどね。そうすると理論のほうが修正を迫られるはずです。でも、現在の「太陽系外縁天体」の発見の精度からすると、そういうものがあれば、そろそろ見つかっていていいはずなんだけと。