猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

ところが春と秋は違う

 ところが、「立春から春が始まるのだから立春がいちばん寒い」、「立秋から秋が始まるのだから立秋がいちばん暑い」というこの言いかたは、どうも立夏立冬にはあてはまらないように思います。
 今年のばあい、立夏が5月5日、立冬が11月7日です。年によって少しずれることもありますが、ずれても1日程度です。で、東日本以西の本州・四国の太平洋側について言えば(私はこの範囲しか知らないから)、立夏は「春の盛り」というよりはやっぱり「春は終わって夏が始まる」、立冬も「秋の盛り」というよりは「秋が終わって冬が始まる」の季節感です。「春の盛り」は桜が咲くころから4月いっぱい、「秋の盛り」は10月ごろでしょう。つまり、立夏にはもう「春」度は低くなっていて、「夏」度は上がり始めているし、立冬には「秋」度は低くなり「冬」度はもう上がり始めている。
 なぜこうなるかというと、立春立夏立秋立冬の「節気」はほぼ3か月ごとに均等に決められている(2010年では2月4日‐5月5日‐8月7日‐11月7日)のに対して、「季節感」は3か月ごとに変わるというわけにはいかないからでしょう。
 まず、「暑い‐寒い」が両極に近いほうを占めているのに対して、「寒い→暑い」の中間である「暖かい」や「暑い→寒い」の中間である「涼しい」は、「中間の時期」の感覚だということがあります。気温が変化している時期に「暖かい」とか「涼しい」とか感じるのであって、変化の時期だからわりと早めに通り過ぎてしまう。
 しかも、いちど暑くなってしまうと、秋になる前に気温が下がっても、それは「涼しい」とも「暖かい」とも表現されず、「寒い」と言われてしまう(「涼しい」を使わないわけではないけれど)。「肌寒い」とか「梅雨寒」とかいうようにですね。夏に気温が上がらないと「涼夏」(「すずか」でも「りょうか」でも人名に使えそうです。「すずな」と読ませることもできなくはないし)とは言わず「冷夏」だし。あ、でも、冬のほうは「暖冬」であって「暑冬」とか「熱冬」とかではないよね。「アツい冬」という表現があっても……それはたぶん気候の話ではないし。それに、秋から冬に向かう段階で、気温の高い日があると、「暑い」も使わないではないけれど、やっぱり「暖かい」を使うことが多いし、「小夏日和」とは言わないで「小春日和」というわけです。これはなんでなんだろう?
 また、冬から春に向かい始めて「暖かい」と感じるのは気温が10度台の半ばになったあたりで、これが20度台半ばになるともう「暑い」の領域に入ってしまう。逆に、夏から秋にかけて気温が20度台半ばまでしか上がらなくなると「涼しい」と感じるけれど、10度台の下のほうまで下がるようになるともう「寒い」という表現がふさわしく感じられるようになります。「暑い」は20度台半ばから30度台後半、「寒い」は10度台の下のほうから氷点下までとカバーする範囲が広いけれど、「暖かい」と「涼しい」はわりとその範囲が狭い。