猫も歩けば...

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節分と立春がいちばん寒い理由を「微分」で考える

 「立春を過ぎたのに寒いですねぇ」というのがいまの時期の決まり文句的なあいさつ――だったようにも思うのですが、あんまり最近聞かないし、自分も使わないですね。まあ、いまここで使ってるけど。だいたい、テレビで「今日は立春です。立春の各地の表情を集めてみました」というニュースが流れるのは、ニュースがないからであって、いろいろと流すニュースの多い時節には「時候の話題」は埋没してしまいますね。
 立春についてではなく、立秋についてですが、だいぶ以前の『天文年鑑』に「立秋が暑いのはあたりまえ」ということばが出ていました。立秋は「ここから秋が始まる」という日である。つまり、秋が始まる前には夏の暑さは強くなり続け、秋が始まることで夏の暑さが収まっていくのならば、立秋はその夏の暑さが極点に達する日だということです。
 それを読んでなるほどと思いました。理系の本らしく、考えかたが「微分」なんですね。
 数値の変化を「微分」した値は、数値が増えるとプラスに、数値が減るとマイナスになります。0から1に変化してもプラスだし、100から200に変化してもプラス、逆に、0から−100に変化しても、201から200に変化しても「微分」値はマイナスです。そこで「夏」度と「秋」度という値の変化を考えると、「夏」度の値は、立秋までは増え続け、立秋で秋が始まることで、立秋から減り始める。つまり「夏」度の数値の変化を「微分」すると、立秋からその「夏」度の「微分」値はマイナスになる。しかし「夏」度の値そのもの立秋で最高点に達している。逆に、「秋」度は立秋から増え始めるのだから、立秋を過ぎると「秋」度の「微分」値はプラスになるけれども、「秋」度の値はまだごくわずかだ。したがって、「立秋こそ夏の盛りであり、立秋前後がいちばん暑い」ということになります。
 冬のほうも同じだと考えれば、節分(立春の前日)と立春の前後がいちばん寒いのはあたりまえということになります。節分に向けて「冬」度は増え続け、「冬の寒さ」は厳しくなり続ける。そして、立春から「冬」度は減り始め、「春」度が増え始めるが、「春」度の値そのものはまだほんのわずかだ。だから、節分‐立春前後がいちばん寒いわけです。節気が「小寒大寒立春」と進むので(なんていまどき気にしないか)、「大寒」より「立春」のほうがなんか暖かい感じがするわけですが、実際には「立春」は「超大寒」なんですね。
 このあとは、雪ではなくて雨が降り始めるという「雨水」、虫が冬眠から醒めるという「啓蟄」と続いて、その次が「春分」です。「雨水」と「啓蟄」はなんとなく「希望的」な特徴が並んでいるようにも思います。実際には、東日本以西の太平洋岸では雨水のあとに雪が降ることも多いし、「啓蟄」はともかく「雨水」はまだまだ寒い。前に英語のカレンダーを見せてもらったとき、春分が The first day of spring (春の最初の日)と書いてあるのを見て、「ああ、そう考えればいいんだ」と思ったことがありました。
 ところで春の日というとハルヒですが(いかにも無理やりですが、でも台湾版ハルヒは「涼宮春日」という表記になっています)、ハルヒ映画の公開は立春に合わせた? そんなことないか……。