猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

なぜこの本が難解なのか?

 正直に言えば、ともかく 難解 でした。
 まず、ところどころに出てくる専門用語がよく理解できない。専門用語を説明する「コラム」も設けられているのだけれど、私には「コラム」自体が難解で、しかも「コラム」を読んでいるうちに本文の流れを忘れてしまうので、どうしようもありません。
 用語だけではなく、概念がよくわからないとか、なぜそうなるのかがわからないというところもあります。たとえば佐藤さんは素粒子の「大きさ」とは何かということの説明で「波というからには一波長よりは大きいはずだからである」(62ページ)と書く。私はこれを読んで「え?! 一波長より短くても、なんか波打ってたら波は波じゃないの?」と思いました。それに続けて「ここでいつの間にか、「素粒子は波」となっていて粒子ではないことに気づく」と佐藤さんは書いているんですが、「いつの間にか……気づく」んじゃなくて、著者がそういうふうに話を進めたからそういう話になったんじゃないですか。佐藤さんの思考の道筋にこちらの思考がぴったりはまればその説明でよくわかるんでしょうが……私ははまらなかった。だから難解でした。
 もう一つ難解なのは、全体の「筋」がつかみにくいからです。ノーベル賞日本人3人(化学賞も入れれば4人)受賞というエピソードから始まるのはわかるにしても、それがどうして「宇宙と素粒子 ― 私の遍歴 ―」で終わるのか、いまでもよくわかりません。
 難解なのは、たぶん、作者の佐藤さんに「あまりにもわかりやすく一般向けに語られる科学解説書」への強い抵抗があるからだと思います。理科の基礎も十分に身につけていない読者を相手に、「超対称性」とか「超ひも理論」とかいう、まだ実証の乏しい仮説の段階にすぎない理論を、いかにも「現代科学が解き明かした宇宙の真の姿っ!」みたいに解説することへの危惧、そして反発というのが、この本の「難しさ」の一つの理由だと思う。
 私みたいに、理科の基礎も十分ではないのに「対称性」とか好んで語っている者としては、はい、すみません、としか言えないです。