清瀬 六朗です。
今日、2025年6月1日は、日本の気象業務が百五十年を迎えた記念の日です。
なんかぜんぜん目立たないんだけど。
前回書いたとおり気象予報士試験を目指している私としてはやっぱり記念しておきたい日です。
気象庁が「気象業務150周年特設サイト」というのを作っています。
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/intro/gyomu/index2.html
それによると、明治8(1875)年、現在の虎ノ門に「東京気象台」というセクションができて、まず6月1日に地震観測を開始、6月5日から気象観測を開始したそうです。
地震観測のほうが先だったのですね。
1875年6月ということは、西南戦争(1877年1月)が勃発する一年半前です。明治六年政変(征韓論政変)は2年前(1873年)に起こっていて、西郷隆盛は政府を辞めて鹿児島に帰っていた時期です。
明治維新後の、まだ「物情騒然」とする時期に気象観測は始まっているのです。
(「物情騒然」、私はこれを書くまで「世情騒然」だと思っていた。どうでもいいけど)
一方で、ヨーロッパでは自然科学的な気象観測が1856年から始められています。
1853~1856年のクリミア戦争で、フランスの艦隊が暴風で大被害を受けたことから、気象予報の必要性が認識されたのがきっかけということです。1863年には、等圧線の入った、私たちがテレビなどでよく見かける「天気図」も作られるようになりました。
フランスで気象観測の制度化のために動いたのは天文学者ルヴェリエです。
ルヴェリエは1846年に海王星発見のもととなる計算をしたことで知られています。
この海王星の発見については、イギリスのアダムズも同様の計算をしていたのですが、ルヴェリエはベルリン天文台のガレに協力を要請し、その結果、ガレがいち早く新惑星を発見したという経緯があります。
ルヴェリエ‐ガレ組とアダムズのどちらが「海王星の発見者」かという論争はあったのですが、現在はルヴェリエとアダムズは「同着」とみなされ、両方が発見者とされています。
それはともかく。
天気図を作るには、自国のデータだけでは足りず、他の国の気象データを集めることが不可欠です。現在は世界じゅうの気象観測所がネットワークで結ばれ、一つの国の天気図を作るにもその世界のデータを利用しています。
で、ルヴェリエは、ドイツ(プロイセン)のベルリンのガレに新惑星(海王星)捜索の協力を依頼したぐらいですから、ヨーロッパの同業者に広い人脈を持っていたのでしょう。それが、気象観測のための情報集めに活かされたのだろうと思います。
ところで、ルヴェリエは天文学者です。
天気も「お空の上の現象」だからその予報を天文学者に任せた。
私たちが知っている「気象学」というのが、当時はなかったのですね。
低気圧で天気が悪くなる、気圧の下がり方がひどいと嵐が来る、低気圧は移動するらしい、ということは、航海に必要なこともあってわかっていましたが、その程度でした。
天文学のほうは、どれだけ正確だったかは別として、天王星の公転運動の「異常」から海王星の位置が推定できるくらいまでは発達していました。
天体の位置の計算って、単純な法則で計算できるのは天体が二つのばあいまでで、これが三天体以上になると、「摂動」計算というめちゃくちゃにたいへんな計算が必要になります。海王星(と後に名づけられた新惑星)の位置の推定のばあい、太陽と天王星と新惑星という三天体が絡むので、この「摂動」計算が絶対に必要です(ちなみに「三天体の運動を計算するのがめちゃくちゃたいへんな問題」のことを「三体問題」といい、劉慈欣のSF小説『三体』のタイトルはこれと関係があるのだそうです)。
で、ヨーロッパで気象観測が始まったときに、天文学では、遠い惑星の「三体問題」を解くために必要な高度な摂動計算ができた。
でも、気象学はほとんどなかったわけです。
そこから20年で、日本は気象観測を制度的に始めています。
これはけっこうすごいことだと思います。
ちなみに、私はというと。
ルヴェリエから170年、日本の気象業務開始から150年経って長足の進歩を遂げた気象学に対して、『気象予報士試験精選問題集』(成山堂書店)を眺めて「うーん、わからない…!」と呻く日々でございます。
加えて、その150年前に始まった気象業務に関する気象業務法というのもあって、これもなかなか覚えられないですよ。
あ、それと、もうひとつ、ちなみに。
来週6月8日に、制服系イベント(同人誌即売会)「日本橋すみれ学園」1時間目 に参加します(大阪・難波御堂筋ホール9階)。
https://sumire.uniformkiss.com/
「さくら01 アトリエそねっと」です。
毎年、東京で開かれている「制服コミュニケーション」の大阪開催イベント(派生イベント)ですね。
大阪開催なので「にっぽんばし」すみれ学園のはず。
巧く行けば新刊一種(一度は断念したんだけど、なんとかなるかも)、さらに巧く行けばペーパーもあるかも、というところです。
よろしかったら、お越しくださいませ。