猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

褐色矮星天文学

 ということで、この「低温褐色矮星掃索プロジェクト」で、低温の褐色矮星が次々に発見されていくということになると、次は、「褐色矮星の分類」というような動きが出てくるんじゃないかと思います。
 まずは、その、予想される「T型より低い表面温度のスペクトル型を持つY型褐色惑星」が発見できるかどうか、が一つの焦点になるのでしょうか。しかし、「T型」というのが「天ぷらの焦げる温度」だとすると、「Y型」は「天ぷらがほどよく揚がる温度」ぐらいなんだろうなぁ。もしかすると、表面温度は地球表面と同じくらいという褐色矮星も見つかるかも。
 そうすると、私たちには、「自ら輝く星」の表面に移住するという未来が開けるかも知れません。そういう星に移住すると、空に太陽が上がるかわりに、空がいつも暗くて、足の下からいつも照明が当たっているというフットライト生活を送ることになりますが。ただ、問題はいくつかあって、(1)地面がないこと、(2)酸素がないか、あっても星の中心部に沈んでいるか、大気中にあったとしても二酸化炭素などになっている可能性が高いこと、(3)足の下でいつも核融合が起こっているということは、ガンマ線がつねに足もとから噴き上がってくるわけで、その対策が必要なこと――などが挙げられます。少なくともまず植物を移住させて酸素を作る必要があるでしょうね。小さい植物をいっぱい浮かせて、星の内部の光で光合成させつつ、その植物群にガンマ線を吸収させ、可視光は透過して貰う。ほんとに「輝く緑の星」になりますよ〜。なんかすごい都合のいい設定だけど。いや、そういう星にはもしかするとふわふわ漂う先住生命さんがいらっしゃったりして、そのひとたちはガンマ線にすごい耐性があったりして。この「Y型褐色矮星ライフ」はサイエンス系ファンタジーの素材には使える気がするなぁ。どうなんだろう。
 それはおいといて。
 もう一つ、考えられるのは、褐色矮星がどこで、いつ、できたかという問題です。
 上に書いたのとは逆に、星間雲からまず恒星が生まれ、原始惑星系円盤までできたところで、その惑星系円盤のガスをぜんぶ吸い尽くして褐色矮星ができるということがないかどうか、つまり、褐色矮星と惑星の中間的な生まれかたをした褐色矮星がないかどうか――でもこれはあんまりなさそうな気もする。
 それとは別に、褐色矮星に「世代」があるかどうかという問題もあります。つまり、「宇宙ができてすぐに生まれていまも存在し続けている褐色矮星」と「比較的新しくできた褐色矮星」という区別があるのかどうか。それは、「水素・ヘリウムのみでできた褐色矮星/重元素を含む褐色矮星」という組成(構成物質)の違いに現れるはずです。ただ、「木星と同じような星」だと、少なくとも炭素とか窒素とかはありそうですね。だとすると、少なくとも宇宙の最初にできた褐色矮星ということはないわけです。
 しかし、「宇宙の最初にできた褐色矮星」がもし存在するにしても、それはもう重水素の「燃料切れ」を起こしているでしょうから、もうほとんど輝いてはいないでしょう。だからたんに「暗くて見つけていない」だけかも知れない。そうではなくて、褐色矮星にはじつは寿命があり、「燃料切れ」を起こすと、外層大気が失われて水素とヘリウムの核だけになってしまうのかも知れないし、その核もふわふわと漂って消滅するのかも知れない。あ、でも、自分の重力でかたまったものが、外から力が加わらないでなんとなく分解するということはないかな。どうなんだろう。まあ、中性子星とかブラックホールには絶対にならないだろうけど。
 褐色矮星にどのようなタイプがあり、どのような進化をするのか、まあ私が知らないだけでいまもわかっていることはいろいろあるんだろうけど、「低温褐色矮星掃索プロジェクト」が進むと、もっといろいろなことがわかってくるのだろうと思います。