猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

「共有結合」の説明

 原子は、ほかの原子を自分の隣に引き寄せてくっつくためには、自分のまわりの電子を使います。自分のまわりの電子を、隣の原子の電子に「絡みつかせて」引っぱってくるのです。そうすると、電子が絡みついているために原子同志がなかなか離れられなくなり、「分子」として安定します。この「電子を絡みつかせてくっつく」という「くっつきかた」を「共有結合」といいます。
 「共有結合」をちゃんと説明すると、こんな感じ:
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%B1%E6%9C%89%E7%B5%90%E5%90%88
 ところで、プラスとマイナスの電気は引っぱり合い、プラスの電気はプラスと、マイナスの電気はマイナスと反発し合います。で、電子はどれもマイナスの電気を帯びている。ということは、電子どうしは、「絡みつく」どころか互いに反発するはずです。それがなぜ「絡みつく」のかというと。
 えーとですね。
 説明しようとすると、「パウリの排他率」(「羽売りの吐いた率」って何ですか? はい、誤変換ですね)という話が出てきて私の手に負えなくなります。ちゃんとした説明はここ(パウリの排他原理):
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%82%A6%E3%83%AA%E3%81%AE%E6%8E%92%E4%BB%96%E5%8E%9F%E7%90%86
 だから、すごいいいかげんな説明でごまかすと:
 1. 電子はくるくると回転しているのだけれど、その回転の向きが逆なので、一度くっつくとなかなか離れない。同じ大きさの歯車が、一つは右向きにすごい速さで回っていて、もうひとつは左向きにまったく同じ速さで回っているとします。それを隣り合わせると、歯が噛み合いながらすごい勢いで回りつづけて、離れなくなってしまう。これが同じ向きに回っていると引っかかって止まってしまうし、もし回転が止まらないとするとはね飛ばされて飛んで行ってしまいますが、回転が逆向きだと隣どうしでくっついて回りつづける。それと同じ――じゃないんだけど、たとえで言うと、そんな感じです(「スピンが逆なので共存できる」というと多少はましになる――けど、こんどは「スピン」の説明が必要になる)。
 2. もっと短く説明すると、電子はそれ自体が小さな磁石で、磁力の向きが逆なので引っぱり合って離れなくなるのです。
 どちらの説明も正確さには欠けますが。
 さて、水素は共有結合ではほかの原子を一つしか引き寄せることができません。水素は「小さい」ので、普通は一つしか電子を持っておらず、最大でも二つしか電子を抱え込めないのです。だから、水素は、その一つの電子を他の原子の電子に絡みつかせると、もう別の原子とくっつくことができなくなります。
 ところが、酸素、窒素、炭素などの原子は、最大で四つまで電子を絡みつかせてほかの原子を引っぱってくる可能性を持っています。とはいっても、実際には、その「四つまで」の能力を最大限まで活かすことのできるのは炭素だけです。ほかの元素ではその「四つ」より少ない数しか引きつけられない。
 それはなぜかというと、炭素以外の、窒素・酸素などの原子では、自分のまわりの電子自身が最初から組になって絡みついているからです。その分はもう他の原子の電子を絡みつかせるためには使えない。自分のほうで先に絡まっているからしようがないですね。この「自分の電子だけで二つ組になって絡みついている」という「電子の組」は「孤立電子対」または「ローン・ペア」といいます。
 酸素では、四つの「他の原子の電子を絡みつかせられる可能性」のうち二つがこの孤立電子対に使われている。だから、他の原子の電子を絡みつかせて原子を引きつけるために使えるのは、実際には二つの電子だけです。一つの電子が、他の原子の一つの電子を絡みつかせてその原子を引っぱってくるのですから、酸素は二つの原子と共有結合でくっつくことができる。酸素は二つの原子とくっつくことができ、水素は一つとしか結びつけない。そこで、酸素原子が二つの水素原子を引っぱってきてくっつくことで水の分子は成り立ちます。