猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

「正四面体」の頂点を二つずつ分け合うと必ず偏りができるという話

 さて、では、酸素原子のまわりのどこに水素原子がくっつくかということが問題です。
 「ほかの原子の電子を絡みつかせることのできる場所」が酸素のばあい四つある。さて、電子はマイナスの電気を帯びていますから、電子どうしは「絡みつき」を起こしていないかぎり反発しあいます。「絡みつける」のは二つだけなので、四つの場所にいる電子はそれぞれが反発し合う。反発し合うからといって、原子のまわりから離れるわけには行きません。そういうときにどうすればいちばん平和か(安定するか)というと、その四つができるだけ互いに離れている場所に行けばいい。
 といって、丸い(球形の)原子のまわりですから、一つの電子(または二つひと組で「絡みついて」いる電子の対)から遠ざかると、別の電子(または電子対)に近づいてしまうこともある。
 それでは、丸い原子のまわりで、どういうふうに「離れる」と、できるだけ互いに離れていることになるか?
 原子のまわりに正方形を描いて、その頂点に一つずつ――と、平面で書いていると考えてしまうのですけど。
 原子は立体なので、正四面体、つまり、正三角形を四つ貼り合わせた立体の頂点に一つずつというのがじつはいちばん安定します。
 「正四面体」はわかりにくいかも知れませんが、角が一つ少ないピラミッドみたいな形といえばいいかな? かえってわかりにくい?
 正四面体は、面が四つ、頂点も四つです。その頂点のところが、どこからも等距離に遠いため、電子の居場所としていちばん安定している。
 さて、水の分子を作っている酸素原子ばあい、その正四面体の四つの頂点のうち、二つに「もともと酸素が持っていた電子が自分たちだけで絡みついた電子の対(孤立電子対)」が、残りの二つに「水素の電子と絡み合い、水素を引きつける電子」が位置します。つまり、孤立電子対が二つと、水素が二つとが、酸素原子のまわりにくっつくことになります。
 さて、孤立電子対と水素とが中心のまわりに「対称」にくっつくことのできるくっつきかたがあるかというと。
 ありません。
 正四面体というのは、中心をはさんである頂点の反対側は必ず「面」なのです。つまり、中心をはさんで対称な「点」というのがもともと存在しない。ここで「中心」というのが何を指すのかというとまたややこしいですが、とりあえずは、正四面体をちょうど包みこむ球の中心と考えてください。
 したがって、酸素原子のまわりの正四面体は、水素が繋がっている側と、孤立電子対がある側の二つの「側」に分かれてしまうことになります。
 電子だけ見れば、孤立電子対が二つのある側も、水素が繋がっている側も、電子2個ずつですから違いはない。しかし、水素の側は、先に、小さな(電子を一つしか絡みつかせられない)水素がくっついている。
 水素原子は、原子核がプラスの電気を持ち、まわりの電子がマイナスの電気を持って釣り合っています。ところが、その電子が酸素側の電子に絡みついてしまっているので、水素原子のなかのマイナスの電気が酸素原子側にずっと引き寄せられた状態になっています。ということは、水素原子の本体のほうはプラスの電気を帯びている。
 反対側はというと、孤立電子対が二つあります。こちらは電子しかなく、電子はマイナスの電気を帯びているので、酸素原子の水素のくっついていない側はマイナスの電気を帯びます。
 そうすると、水の分子は、水素原子二つがくっついている側がプラス、くっついていない側がマイナスと、電気を帯びた状態でいるのがいちばん安定していることになります。この、分子の片側がプラスの電気を持ち、片側がマイナスの電気を持っている状態を「分子に極性がある」といいます。
 で、水に極性があるせいで砂糖が溶けたり、アルコール(エチルアルコール)を水で割ることができたり、泥水ができたりする。でも、その話はまた次にして、今回はここで終わりましょう。なんか長くなったし。