猫も歩けば...

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「専制」の存在

 しかし、もちろん古典時代ギリシアと同時代の世界にほかの支配体制が存在しなかったわけではありません。
 古典時代のギリシア人がよく知っていた世界にも、ペルシアやエジプトなどの王国があり、同じギリシア人の世界にも、後にアレクサンドロス(アレクサンダー、アレキサンダー)大王を生むマケドニアのような王国がありました。
 こういう王国について、古典時代ギリシア人は、王が、人民を「自分の持ちもの」としてこき使うような体制だと考えたようです。そのばあい、王は神や英雄の子孫だとして神聖化され、「神の子孫」・「英雄の子孫」としての資格で支配することがある。また、王が征服者で、征服された人民を奴隷にしていたり、奴隷同様にこき使ったりしていることもある。支配者である王と、支配される人民とのあいだには「最初からの上下関係」があるわけです。こういう支配を古典時代のギリシア人は「専制」と呼びました。そして、古典時代ギリシア人にとって、「専制」は遅れた支配体制であり、「自由な」ギリシア都市の「政治」体制に対して不自由な体制であると意識されたのです。