猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

親の権利・権力

 また、子どもは親から生まれるとしても、子どもの命はあくまで神様が与えるものだというのがロックの原則です。親は、子どもが大きくなるまで、子どもが無事に大人になるように保護し管理するように、神様から委託されている存在だと考えます。だから、親が子どもに対して持つ権力は、子どもがまともに大人になるように管理し、保護するという目的に役立つ範囲に限られる。だから、親の子どもに対する支配権はあるのだけれど、それは「神様が親に子どもを委託した」という条件に見合う範囲だけです。だから、フィルマー卿のように「父親は子どもに対して絶対的権力を持つ」という考えにはならない。「生んでやったのだから親は何をやってもいい」という考えにはならないわけです。
 なお、ロックは基本的に父親と母親の子どもに対する権利と権力は同等だと考えます。ただし、「親の子どもに対する権利・権力」は「子どもを保護する」という役割に応じて与えられる。ロックは男のほうが力が強いと考えているので、「力で子どもを守らなければならない」というばあいには父親の権利と権力のほうが優越すると考えているようです。そういう面では、父親の権利のほうが母親より大きく、権力も父親のほうが強いことになるので、ロックは「家父長制」論とまったく無縁というわけではありません。しかし、その「父親の権力」も、あくまで「子どもを保護する」という役割に応じた権利・権力の範囲のなかに収まります。
 また、同じように、親の権力は「子どもを保護する」ことに応じて与えられるのですから、「生まれの親」よりも「育ての親」のほうに親としての権利と権力が属すると考えます。