猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

「人を殺しても生き延びてよいか?」への答え

 ところで、「自分が生き延びる」という義務と、「人を殺してはならない」という義務がぶつかったときには、「自分が生き延びる」ほうが優先されます(ただし自分は善良な人間であるということが前提ですけど)。つまり、悪人に襲われたり、悪人が人を殺そうとしている場面に遭遇したりして、その悪人を殺す以外にその悪行を止める方法がないときには、殺すことは認められる。
 人殺しをしようとする悪人も「生き延びる」義務は持っているわけですから、悪人であっても殺すとその人に義務違反を強制することになる。だから、ほんとうは殺すのはよくない。もし悪人に殺されそうになって命の危険を感じても、法の助けを求める余裕があれば、すぐに殺してはならず、まず警官を呼ぶとかして法に訴えるべきだとロックは言います。でも、法に訴える余裕がないばあいには、人を殺そうとするような悪人は殺してもやむを得ない。
 「善良な人」と「悪人」ならば「善良な人」が「生き延びる」ことを優先すべきだというのがロックの立場です。不法に人を殺そうとするような悪人は、自分で「人間らしさ」を捨てている。「人間らしさ」を捨てた人間よりも「人間らしさ」を持った人間が生き延びるほうが、神様が人間を造った意図に叶うと考えるわけです。