猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

甘さと毒

 「quatrequarts」というのは、


 フランス語で「四分の四」の意味で、粉と卵、砂糖、バターを焼き菓子の基本形をさす。パウンドケーキと同じ意味を持つこのタイトルは、お菓子のように甘い歌声にかけ、さらに、音符とことばと声、そして聞いてくれる人で完成される歌の世界、という意味も込められている。
ということだそうです。ちなみにタイトルは池澤春菜さんご本人の発案らしい。ホームページにレシピを載せていらっしゃる(ホームページ→Spicial→お家(うち)の中の絵が出てくるのでその台所あたりをクリックすると出てきます)お料理好きの春菜さんらしいタイトルだと思います。それにしても、パウンドケーキってそんなにバター入ってたんだ、とびっくりしたのは私だけ……?
 前作のフルアルバムが Confetti で「お菓子」なので(Confetti の単数形と同系統の confeito というポルトガル語から「コンペイトウ」という日本語ができた。ラテン語起源……と書こうとしたらラテン語辞典には載ってないな(汗))、そこからの続きということになるようです。
 ただ、ジャケット写真やブログで発表されている写真を見、また記者発表でのやりとりを聴いたところでは、「焼き菓子」というよりは、いろいろな味の飴とかキャンディーとかの詰め合わせというコンセプトで作った作品のようです。ジャケット写真(台湾での撮影)で春菜さんがくわえておられるのは青いカプセルのクスリで、本来はダイエット食品(薬品?)とのことです。

 表紙で口にくわえてる青いものが(それがすごい気になってました―質問者の方)それはですね、時節柄、非常に言いにくいんですが、クスリのカプセルでして、で、ハワイに行ったときに、ダイエットの薬っていうので売ってたんですよ。だけどものすごい色なんですよ。とても食べものと認められないような。ほら、青い食べものってないじゃないですか。ブルーベリーとかむらさきだし、完全に、こう、真っ青な食べものって、どう考えても毒のもの、なんでこんな色を薬につけたの、と思ったんですけど、それを、小道具に使おうと思って買ってきて、で、それがたとえば白いカプセルとかだと、ちょっとなまなましいかなと思ったので、ちょうどその青い色が非現実的で、かわいかったので、え、口にくわえてみたりとかして、遊んでみたんですけど。
 たしかに、「ブルーベリー」とか「青物」とか「青魚」とかはあっても、文字通り「青い食品」というのはないですね。ソーダ水やカクテル用のシロップぐらい? きっと、数種類合わせて飲むときにまちがえないように派手な配色になっているんでしょうけど。
 それにしても、ハワイに行って海に潜ったり、海岸で漂着物ごっこをしたり(なんですかそれ?)、山に登ったりして、それでそのときにジャケット撮影用に薬を買ってきて、それをこんどは台湾まで持っていって撮影に使うなんて、春菜さんは活動的でマメなひとだと思います。他の追随を許さないほど「凝る人」だというのは、Mac音ナナの紹介文とかにも書いてありますけどね。
 いろいろな味の、ということですが、基本はやっぱり「甘いお菓子」なのではないかと感じました。春菜さんはやはり甘い味がお好きなようで、いま(「アルバムが完成したいま」)飲みたい飲み物を訊ねられて、お砂糖がいっぱい入ったミントティーと答えておられました。

 いまは、わたし的には、いちばん、レコーディングも終わって、いちばんほっとできているところなんですよ。だから、そうだなぁ、甘みをけっこうつけた、ミントティーとかが、いいかな。あの、生のミントの葉っぱで、モロッコとかトルコで飲むような、で、お砂糖もいっぱい入れて、甘いんだけどスッキリした、生のミントティーとかがいいですね。
 よく覚えていないのだけど、前に聞いた話では、それは、ミントの葉っぱをガラスの急須みたいなのにぎゅうぎゅう詰めこんで出すミントティーではないのかな?
 このあいだ、スペイン関係の仕事をしておられる方にたまたまうかがったところでは、スペインの人たちもミントティーをよく飲む、スペインの人たちはでっかい角砂糖を二つも入れる……ということでした。そういえばトルコでもお茶を出してもらうとお砂糖が二つついてきたなぁ。地中海ってやっぱり「甘いお茶」の文化なんだろうか? 春菜さんも地中海(ギリシア)生まれですし。
 えーと、歌の話に戻ると、春菜さんは前のフルアルバム Confetti を自分で聴いたときの印象として

 はじめて、自分の声がいかに甘ったるいかっていうことをようやく認識したんですね。それまで、しゃべるたびに、まわりから、「すごい変わった声してるね」とか、あ、まぁ、声優業界ではない人たちからは言われてたんですけど、そのたびに、「いえいえ、普通の声ですよ、普通にしゃべってますよぉ、何かぁ〜?↑――みたいな感じだったんですけど、Confetti を聴いて、キャラクターとして歌っているのではなくて、池澤春菜として歌ったときに、こんな甘ったるいんだ、甘ったるいって言っちゃうと、ちょっとことばが悪いんですけど、あの、甘いんだ、っていうことを認識したんです。
と語っていました。たしかにイントロダクション(1曲め)の次の曲「Dolce Vita」(「甘い生活」)とか私も「甘ったるい」歌声だと思いますよ。でも「恋咎〜コイトガ〜」のけだるい歌いかたも私は好きなんですけど。
 でも、甘いだけではなくて、甘いと思ってたべていると、思いもかけないいたずらとか、苦みとかが出てくる、というコンセプトなんだそうです。

 POPな感じとか元気な感じ、でもそのなかに少しちょっと毒もあるようなそんなイメージだったんですね。

 (先の「青い薬」の発言に続けて)……そしたらちょうど、あの、小石川桜子さんていうプロデューサーのひとが、「毒か薬か」、っていうキャッチフレーズをつけてくれて、ま、聴く人によって、甘いほうも生きていけば、苦いほうも生きていく、そんな二面性のあるまたアルバムになるといいといいかな、と思って。

 あ、なんでこんなとこにこんな調味料が、ぴりっ、(まちがってんじゃないかなー―と春菜さんのツッコミ)あの、なんか山椒みたいな、こう、スパイシーぃ? みたいな。甘いんだけど、なんかそのところどころにポイズンが、ね、あったりするんで、ちょっとこう、なめてかかるとぴりっとしたり(WAVEMASTER HAPPIESの村崎さん―司会―)。
 「山椒」? 甘くてスパイシーってどんなのだろう? こんど「砂糖+山椒」味を試してみよう。「甘くてシナモン味」とかならわかりますが。ともかく、歌にいろいろとトリックが仕掛けてあるということですので、楽しみにしていたいと思います。
 私は、春菜さんの歌声というと、甘かったりポジティブだったり元気そうだったりする声はもちろん、けだるそうだったりはかなげだったりする声も好きで、とくに、その声の表情が曲のなかで猫の瞳みたいにくるくる変わるようなところが好きなんですけれど。でも、それは「地」として「甘い歌声」ということがあるからかな、と、今回の会見を聴いていてあらためて思いました。といっても、私はファンとしてはかなり新参者なので、 Confetti と『光の花束』しか聴いていないですけど。
 WAVEMASTER HAPPIES からのこの二作品はたいへん気に入っていて、買った直後は、どちらのアルバムも、何日間か、自分の部屋にいるあいだはそのアルバムばかりずっとリピートさせて聴いていました。