猫も歩けば...

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「海の長周期気候変動」の仕組み

 「海の長周期気候変動」はアリューシャン低気圧が10年ほどの周期で強くなったり弱まったりすることによって起こるらしい。アリューシャン低気圧というと天気予報でよく聴……かないな。「太平洋高気圧」とか「オホーツク海高気圧」とか「移動性高気圧」とかはよく聞くけれど……って「高気圧」ばっかりやん。あ、「高気圧」以外では前線がありますね。「梅雨前線」とか「秋雨前線」とか。日本列島近くによく来る「低気圧」は前線の「つきもの」なので「低気圧」には独自の名まえがないのでしょう。日本列島近くに来る低気圧で特別な名まえがついているのは「熱帯低気圧」と「台風」ですね。
 で、「アリューシャン低気圧」というのは、北海道や千島のはるか東の北太平洋で発達する低気圧で、夏の太平洋高気圧と同じように、動かずに同じ場所に停滞しつづける強力な低気圧……らしい。冬に北日本のほうに来る低気圧が発達すると台風並みの勢力に発達することがあるようです。その猛烈な低気圧たちが最後に流れこむ先の超低気圧(なんか「超監督」みたいだな。いや、なんとなく……)がアリューシャン低気圧です――という理解でいいのかな?
 さて、日本列島の近くは、南から来た暖流「黒潮」と北から来た寒流「親潮」がぶつかり合う海です。アリューシャン低気圧も台風と同じように渦を巻いている。アリューシャン低気圧が強いと、その渦の気流で親潮が後押しされ、親潮の勢いが南のほうまで席巻して、東北日本北日本沖の海が「冷たい海」になる。逆にアリューシャン低気圧が弱いと、低気圧の渦巻きの気流も弱いので、親潮の勢いが弱まる。すると親潮が十分に南下しきれず、東北日本北日本沖の海が「暖かい海」になる。アリューシャン低気圧は数年から十数年の周期で強くなったり弱くなったりを繰り返すので、それに合わせて東北日本北日本沖の海水温も大きな周期で変動する。これが「海の長周期気候変動」だということです。私のように海とは直接に縁のない生活をしていると、なんか海水の流れなんか風が吹きつけたぐらいでは変わらなさそうな気がするのですが、風の力というのは海流に大きな影響を与えるらしい。
 このような「海の長周期気候変動」は、日本列島近くだけではなく全世界で起こっている。太平洋の東海岸(北アメリカ西海岸)では同じアリューシャン低気圧の強弱で同時に水温変化が起こっているということですし、ほかの海域でも同じような「長周期気候変動」が起こっているようです。
 さて、魚には育つのに最適の水温というものがあり、その感受性はとても鋭いということです。日本列島近くの「冷たい海」は16度ぐらい、「暖かい海」は22度ぐらいということで、マイワシは16度ぐらいではさかんに育つけれど、22度になるとお手上げ(手はないけど。おヒレ上げ?)になってよく育たず、カタクチイワシは逆に22度で盛んに育って16度では育たないらしい。まあ、それはそうだな。魚は服を着たり脱いだり着替えたりして気候に適応することができないものね。それに、気体というのは薄いので、気温の変化には生物はある程度は耐えられます。だから、10分程度ならば、80度のサウナでだって耐えられる。私のばあいは15分ちょっとが限界だけれど(というかサウナで限界に挑むなって……)。でも80度のお湯ならば火傷してしまう。液体は気体よりずっと濃いから、その温度変化の影響も大きいのです。それに、気体のなかでならば、気温が体温より高くても汗が気化することで肌の温度を下げられますが、まわりを液体に囲まれているとそれもできない。だから、海の温度のわずかな変化は、大気中ではかなり大きな変化に相当すると考えてよい。海水温が16度から22度に上がるというのは、大気でいえば0度まで気温が下がっていたのが冬でも20度までしか下がらなくなったというのに相当するくらいの変化なのかも知れません。そんな大変動が海では普通に起こっているらしいのです。
 だから、海水温が「冷たい海」のあいだはマイワシは育つけれど、「海の長周期気候変動」で海水温が「暖かい海」になってしまうとマイワシは育たない。それにいくつかの要因が加わって、海水温が「暖かい海」の温度になってしまったことが、この徹底的なマイワシ不漁の根本原因なのだということです。