猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

しろうとの天文好きの考えること

 ところでアリューシャン低気圧なんて「季節もの」だと思います。だから年によって強弱がばらばらでもおかしくない。太平洋高気圧だって、強い年(猛暑になる)と弱い年(冷夏やぐずつき気味の夏になる)があって、それは直前にならないと確実な予報ができない。赤道附近の東太平洋でエルニーニョが起これば(海水温が高ければ)太平洋高気圧が弱く、梅雨が長引き、猛暑にならないというということは今年は実証されたけれど、エルニーニョの発生はその前兆が観測されるまで予測できないのではないでしょうか。そんななかで、アリューシャン低気圧は、「去年弱ければ今年も弱い、去年強ければ今年も強い」という傾向が強い。そして、その強弱が入れ替わると、大気の状態だけではなく、海の状態まで大きく変えてしまうというのです。しかも、世界じゅうで「海の長周期気候変動」が起こるということは、そういう「去年弱ければ今年も弱い、去年強ければ今年も強い」という「粘り強さ」を見せる低気圧や高気圧があちこちに存在するということのようです。なんでそんなことが起こるのでしょう? よくわかりません。
 そこで、しろうとの天文好きがふと思いついたりするのが、木星の大赤斑だったりするわけです。この大赤斑はいつから存在するのか議論はありますが(過去の木星表面の観測記録に大赤斑がほとんど記録されていない期間があるため)、少なくとも100年以上も存在しつづけている。なぜこの巨大渦巻きが木星表面に存在しつづけているのか、まだ十分にわかっていないはずです。なんでこの渦巻きが安定して存在しつづけているのか。その謎解きは、北太平洋の巨大渦巻き、つまりアリューシャン低気圧の強さが数年間同じレベルで(強ければ強いまま、弱ければ弱いまま)推移することの謎解きにも役立つかも知れないと思います。
 もちろん違いは大きい。地球の現象は大陸や海の複雑な地形の影響を受けますが、木星には大陸はないし、大気が地球よりはるかに分厚い。しかも木星は大きい。大赤斑自体が惑星ぐらいの規模があるのです。そんな渦のことが、地球大気の渦を考えるために何か役に立つのか。
 でも、木星の表面の渦は大赤斑だけではありません。もっと小規模のさまざまな渦が発生しては、存続したり、消滅したり、合体したり衰弱したりしています。同じような渦は土星でも観測されている。その渦の動きから、地球上の大気の渦の力学に役立つモデルや法則は見つけ出せないものか、などと、私は空想したりするのです。
 また、この「海の長周期気候変動」が昔から続いているとすると、はるか昔はずいぶんようすが違ったはずです。たとえば、縄文時代の温暖な時期、海水面がいまよりも高かった「縄文海進」の時期には、日本海対馬暖流が北海道の東海岸まで回りこんでいたといいます(松島義章『貝が語る縄文海進』有隣新書、isbn:489660198X)。当然、東北日本北日本東海岸はいまとは比べものにならないほどの「暖かい海」だったはずです。その「暖かい海」での漁獲がどうだったのか。もちろん遠洋漁業とかはたぶんなかったから比較は難しいかも知れないけれど、ある程度は貝塚の遺物とかでトレースできるはずです。これから「地球温暖化」で気候が激変するという予測があるようですが、数千年規模での人間の生活史をたどってみることはそれへの対処にも有益じゃないかと思ったりもします。