猫も歩けば...

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世界に「真の」はない

 佐藤さんがこの本で強調しているのは、素粒子物理学には「真の……」という存在はないということです。
 典型的なのが「真空」で、普通に「真空」というと何もないことです。しかし、素粒子物理学では「何もない真空」はない。
 その意味というのが、この本の説明ではまたわかりにくい。佐藤さんは「スピンゼロに組んだ対の凝縮なら、フェルミオンとしなくてもスカラー場があればよいとするのが、ヒッグス場である。真空は、いまや空っぽとはほど遠い未知のものの集積体なのである」(172ページ)と書くのですが……よくわかりません。その前に「ボース‐アインシュタイン凝縮」という、フェルミオン(スピンの数値が2分の1の奇数倍、つまり整数ではない粒子)が二つくっついてボソン(スピンの数値が整数の粒子)みたいなものを作ってしまうという現象については説明があるし、ほかに説明の流れもあるから、ここだけ切り出した場合ほど難解ではないけれど、それでもやはり私にはよくわかりませんでした。