猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

座談会の「時間と場所」の感覚

 ところで、私が「都市」というのは一種の自然であるという見かたを知ったのは、imaginary press inc. の同人誌ででした。1990年代初めのことだったと思います。盛んに「建築探偵」をやっていたころの藤森照信さんの仕事を参照しながら作られた同人誌で、「こういう見方があるのか!」と感心したことを覚えています。
 ちなみに、この「アーキテクチャ」の座談会では一度も藤森照信さんの仕事への言及がなかったと思います。べつに藤森さんでなくてもいいんだけど、明治以来の近代建築の流れはこの座談会では参照されていない。近代より前の建築からの流れについても同じです。参照されているのは、20世紀前半のニューヨークと1970年代以後の日本の建築です。つまり、この座談会で参照されている時間と場所の流れは、「近代より前の日本‐近代の日本‐現代(ここでは1970年代以後)の日本」ではなくて、「近代のニューヨーク‐現代の日本」なのです。このことはこの座談会の「立ち位置」をよく表しているようにも思う。「立ち位置」と言っても、座談会だから座ってやったんだろうけど。