猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

最近のスペクトル型分類事情

 で、このスペクトル型とは何かというと:
 恒星(惑星など太陽系天体ではない普通の星)には、青白い星から赤い星までいろいろあります。その色はだいたい恒星の表面温度を反映していて、青白い星が温度が高く、赤い星が温度が低い。「真っ赤に燃える」というと温度が高そうですが、それは私たちの地上の感覚です。地上の環境では、「光っていない」(赤外線は出している)のが、温度が高くなると「赤く光り出す」。そして、その「赤く光り出す」以上に温度が高くなると、虹の七色(文化によっては六色だそうですが)を赤から青いほうへと移って行き、目で見える範囲でいちばん温度が高いのが「青白く光る」状態です。
 太陽の表面温度は「黄色」でだいたい中間ぐらいです。
 この「恒星の色の特徴」を、温度が高い順に並べたのが、このスペクトル型の並べかたの「ハーバード式分類」というものだそうです。
 じつは、私は最後の「S型」を Sweet! で覚えたのですが、ここを Smack! とする覚えかたもあります(そちらのほうが普通?)。「Smack」(衝撃音を表す擬音だそうです)の解釈も二通りあって、「派手にキスをした音」と「勝手にキスしようとしたら頬をたたかれた音」の二つです。まあ、どっちでもいいような。
 ところが、最近の本を読むと、このスペクトル型分類が:
 「O−B−A−F−G−K−M」
となっていて、「R−N−S」がない。だから、暗記法は:
 Oh, Be A Fine Girl, Kiss Me!
となります。なお、ウィキペディアによると、日本語では
 お婆、河豚噛む(OBA, FuGuKaMu)
と覚えるのだそうです。ほかに、
 Oh, Beautiful And Fine Girl, Kiss Me!
というバリエーションもあるようです。
 で、しかも、最近は、O型よりさらに高温の星雲などにP型が設定され、低温側には、低温の星「褐色矮星」のスペクトル型としてL型とT型が確立され、そのさらに下にはY型というのが理論的に想定されているそうです。だから、現在では、スペクトル型は、温度順に並べると:
 「P−O−B−A−F−G−K−M−L−T−Y」の順番
となるようですね。
 では、「R−N−S」の系列は使われなくなったのか、というと、誠文堂新光社の『天文年鑑』ではC型、S型という表現が使われていて、どうもよくわからなかったのですが、今回、調べてみて
 ・単純な温度分類ではM型までで、以下、褐色矮星のL−N(−Y)につながる
 ・化学的な(星の表面の物質の)違いを加味するとR−N−Sという分類が加わる
 ・R型とN型を総称して「C型」とすることもある。
ということがわかりました。ウィキペディアによると、「炭素星」は「C型」、酸化ジルコニウムの存在が特徴的だと「S型」になるそうで、さらに高温星では「ウォルフ・ライエ星」を「W型」として加える由です。
 まあ、何というか、Sが Sweet! か Smack! かというより大きな変化がスペクトル型をめぐっては展開していたのですね。

 どっちにしても「F-G」の並びが崩れなければ「ファイン・ガール」というタイトルは維持できるんですけど。
 ということで、『ファイン・ガール』は、現在残部僅少ですが(というかもともと僅少ですが……)、手を入れて、TRIP?S.F.までに再版します。