猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

小説:黄昏の大地 第三巻

 夏コミティアから延々と落ち続けて2か月半、ようやく出ます。第二巻が去年の冬だから、また一年が経ってしまいました。
 人間と巨大鳥と龍が住む世界が舞台のファンタジーです。爬虫類と鳥まではいるんだけど、哺乳類がいない世界で、人間は巨大鳥と巨大爬虫類を牛や馬のように飼い慣らして使役している。「巨大」といっても、ブロントサウルス(いままでずっと「ロントサウルス」だと思ってた!)などの巨大恐竜のように大きいものではなく、牛とか馬とかと同じくらいの大きさですけど。でも、ほかの哺乳類がいないのになぜ人間だけいるんだ、というようなツッコミどころがあったり。
 あと、植物は羊歯やソテツのような複葉植物や針葉樹のような木しか存在しないことになっています。おかげで挿絵がたいへんです。やっぱり葉っぱの広い植物のほうが描きやすい。
 その世界で、32歳で未婚で定職がなく、戟(枝のある「ほこ」)の腕は武闘会で優勝してしまうくらいの腕を持つ女フィアが、隣の「領邦」の領主が持つ水煙草の道具を買いに行くというお話です。その領主は女の子で、武芸達者な女の人が好きなので、フィアが行って気に入ってもらえばその水煙管を譲ってもらえるのではないかと考えた人から依頼が来て、それで一年遊んで暮らせるぐらいの報酬がもらえるならば、ということで出かけた。1巻では水賊(川に居着いている海賊みたいな集団)と対決したり、2巻では盗賊団と対決したりして、3巻でようやく隣の領邦の首都にたどり着き、領主の女の子と会います。この領主は20歳に達していないのに喫煙の習慣を持っていたりします。あんまりよくないですね。それで、後半は、市民が構成する「民衛兵」の軍隊と盗賊との戦いです。
 「異世界ファンタジー」なのですが、「異世界」性よりも、政治が崩壊した世界ってどうなるの? という実験みたいになってきています。「アナーキー」・「無政府」というと、無秩序、混乱、暴力に満ちた世界というイメージと、「人間は政治支配なんかないほうがよりよく生きられる」というアナーキズムの理想郷のイメージと両方がある。それ、どうなんだろう? そういうことも考えながら書いています。
 ところで、オフセット印刷で図版をきれいに印刷するには、図版を白黒二値化(二階調化)する必要があるのですが、二値化したらきたなくなって何の絵かわからなくなってしまったり、中間の部分がまっ白に飛んだりまっ黒につぶれたりということがずっと続いて、今回もその問題は解決しないまま印刷しています。ところが、入稿して帰ってきてレタッチソフトをいじっていると、わりときれいに二値化する方法がわかりました。必要に迫られて方法を見つけるということもありますが、必要に迫られているときには「いろいろやってみる」というのをやらないからね。