猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

皆既日食

 今日は北大西洋から北極海にかけて皆既日食でした。日本では夕方から日没後にかけての時間でした。東京地方は曇ってました。でも、月の影は日本列島のほうにはかからなかったので、もともとまったく見られない現象でしたけど。
 天文雑誌にはスヴァールバル諸島フェロー諸島の名まえが出ていて、それがどこにあるか正確に知らないまま、なんとなく「北の果て」の日食だと思っていたのですが、イギリス(大ブリテン島)のスコットランドのいちばん北の西側では98パーセントまで欠け、ロンドンでも80パーセント以上欠ける日食だったんですね。地図を見ると、皆既帯は北大西洋をくるっと回って北極のあたりで終わっています。アイスランドグリーンランドアイルランド、大ブリテン島、スカンディナヴィア半島などの大きい陸地をうまくかわすように通っている。で、大ブリテン島とアイスランドの中間にあるフェロー諸島が皆既帯に乗っかったということのようです。
 日食のばあい、太陽の光が強いので、わずかでも太陽面が出ているのと完全に太陽が隠れてしまうのとではぜんぜん印象が違うそうです。私が経験したことがあるのは「金環食」と「深い部分日食」までですので、皆既日食のときに太陽がどう見えるか、地上がどうなるかは自分の体験としてはよく知りません。
 今日の皆既日食は、中継している天文台もあったようですが、日食の時間にそこのウェブサイトに接続しようとしてもつながらなかったので、イギリスのBBCのサイトで見ました。英語の解説つきです。皆既の前後には、解説の学者さんかだれかが「ベイリービーズ」とか「ダイヤモンドリング」とか興奮気味に言ってるのがわかりました。「ベイリービーズ」は、月の谷間からわずかに太陽面が見えて、とぎれとぎれに太陽の光が漏れている状態です。私は最初は「ベイリーの数珠」と覚えたものでしたが。
 私のモニター画面で見るかぎり、皆既日食のときだけ見える太陽の「大気」コロナは正円形ではなくやや横に広がった状態でした。
 私は子どものころから皆既日食を観るのが夢で、実際にその場に行って空を見上げて見るという意味ではいまだにその夢は果たされていないのですが、家にいながらネットで皆既直前−ダイヤモンドリング−皆既−ダイヤモンドリング−皆既終わりという一部始終がほぼリアルタイムで見られるようになったということにはまた別のふしぎさと感動を感じます。ダイヤモンドリングが終わるとすぐに「まぶしい太陽」に戻って行く様子も印象的でした。
 あと、皆既の時間前後は、この日食中継が、世界じゅうのテロとか政情不安とか財政危機とかのニュースを抑えてBBCのトップニュースだった、というのも、感動的でした。まあ、そういうのが感動的になってしまう世界情勢だ、ということでもあるのだけど。
 で、皆既日食の前後は月食が見られることが多くて、今回は半月後の4月4日に皆既月食があるそうです。日本では部分月食から含めると午後7時15分頃から午後10時45分頃まで、皆既が8時56分ごろから9時4分ごろまでで、今度は見やすい時間ですが、皆既の時間がわりと短い月食です。月食のばあいは皆既食になってもすぱっと暗くはならないので、これだと皆既のあいだも月の端っこのほうが比較的明るいままじゃないかな?
 「節気」は太陽と地球の位置関係、日食とか月食とかは太陽−地球−月の相対的位置関係で、連動はしないのですが、今回はたまたま春分の一日前(時間まで考えるとほぼ半日前)の日食、清明の一日前(これも時間まで考えるとほぼ半日前)の月食となります。また、今回は、月の軌道上で月がいちばん大きく見える時期に日食、いちばん小さく見える日(4月1日)に近い時期に月食ということになりました。
 この月食の時期の天文現象は雲で「皆既」してまったく見えなくなってしまう可能性がけっこうあるというのがたいへん悩ましいところで、そうならないことを祈ります。