猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

水は特別な性質の物質だ、の続き

 さて、水に溶ける物質というのは、「イオン」でできた物質か、「極性」のある分子でできた物質だと化学の授業で習いました。
 イオンというのは、物質が、原子や、いくつかの原子がくっついた単位(日本語では「基」と言ったり。英語では「グループ」または「ラジカル」なんだそうです。ふ〜ん、ラジカルなんだ……)で電気を帯びて分解しているものです。科学的にはあまり正確な説明じゃなさそうだけど、まあ、こんなところで許してください。
 たとえば、塩(食塩)は、「塩素とナトリウムの化合物」というけれど、その結晶は、プラスの電気を帯びたナトリウム原子(ナトリウムイオン)とマイナスの電気を帯びた塩素原子(塩素イオン)でできています。塩(食塩、塩化ナトリウム)のばあいは、ナトリウムと塩素でくっついて「分子」になっているよりも、ナトリウムイオンと塩素イオンに分かれて電気的に引き合っているほうが安定しているんですね、たぶん。
 水は、水素が二つ、一つの酸素にくっついた分子になっていますが、イオンでできた物質が入ってくると、水素のイオンが一つと、酸素と水素一つずつが組になった「基」が一つに分かれます。この酸素と水素一つずつが組になった「基」を、私は「水酸基」と習ったのですが、いまは「ヒドロキシル基」って教えるのかな? 何年か前に見たNHKの高校講座(の深夜の再放送)ではそう教えていたけれど。
 だから、「塩が水に溶ける」というのは、もともとナトリウムイオンと塩素イオンでできていた塩(食塩)が水の中に散らばり、水の一部も水素イオンと水酸基イオンに分かれるという現象なのでしょう。つまり、「塩水」のなかには、「塩(食塩)と水」があるわけではなく、「ナトリウムイオンと塩素イオンと、水素イオンと水酸基イオン」が漂っているわけです。
 ところで、水素イオン(電気を帯びた水素原子)と塩素イオン(電気を帯びた塩素原子)でできているのが塩酸(水に溶けた塩化水素)、ナトリウムイオンと水酸基イオンでできているのが水酸化ナトリウムという物質です。だから、塩酸と水酸化ナトリウムをちょうどいい量だけ混ぜると、水酸化ナトリウムに入っていたナトリウムイオンと塩に入っていた塩素イオンと、あと水素イオンと水酸基イオンとが漂っている水ができる。つまり塩水になる。
 塩酸は金属を溶かしてしまうような激しい酸ですし、水酸化ナトリウムも直接に手で触れたら危ない物質です。水酸基イオンはタンパク質を溶かす性質があるらしく、私たちの身体は基本的にタンパク質でできていますから、水酸基イオンがたくさん入っている物質にじかに触れると危ない。その水酸基イオンの激しさを、人間の体は溶けないけど、体の表面についている汚れとかを引き離してくれる程度に弱めたものが石鹸……だったはずです。水酸化ナトリウムは昔は「苛性ソーダ」と言ったそうで、工業原料として使うのだそうですが、いまも「苛性ソーダ」っていうのかな?
 その塩酸と水酸化ナトリウムのような「激しい」、「危ない」物質を混ぜるとただの塩水になってしまう。そのことを知ったのは小学校の参考書ででした。それで私は「理科好き」になりました。