猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

砂糖はなぜ水に溶けるか

 ところが、砂糖の分子は全体としては極性があまりないのに、極性のある水によく溶けます。これはなぜかというと、砂糖の分子はその外側に水酸基(酸素一つ、水素一つの組)がたくさんくっついているからです。水酸基の外側は、酸素の孤立電子対が二つもあるので、合計電子四つ分のマイナスの電気を帯びています。極性のある水の分子の水素の側が、その電気マイナスの電気に吸い寄せられてくっつく。水の分子は砂糖の分子よりずっと小さいので、水の分子が砂糖の分子のあいだに電気力で割りこみ、片端から砂糖の分子の外側の水酸基にくっついていく。そのせいで、砂糖の分子は水のなかにばらばらになって溶けてしまうのです。空気の水分も砂糖の分子の外側の水酸基や水素に引き寄せられてくるので、砂糖を空気中にほうっておくとすぐに湿気てしまうわけです。
 水にエチルアルコールエタノール。お酒の「アルコール」がエチルアルコールです)が溶ける(混ざる)のも同じ理由で、エチルアルコールには端に水酸基がくっついているので、そこに水が結びつくのです。
 エチルアルコールなどは、「アルコール」としては単純な(炭素の数が少ない)分子なので水に溶けます。しかし、複雑な(炭素の数が多い)アルコールは水に溶けなくなります。複雑なアルコールは、水酸基の部分に水の分子が吸いついても、水の分子が吸いつかない部分が大きすぎるので、水に吸いつかない部分だけで集まってしまい、水のなかでばらばらに分かれなくなってしまうのです。
 では、分子の表面に、水酸基ではなくて水素がいっぱいついている分子ならばどうでしょう?
 分子の外側に水素がついているということは、その水素の電子は共有結合で分子の内側にいつも引っぱられているはずです。したがって、水素の、分子の外側に向いている部分には電子が回って来ない。電子はマイナスの電気を持ち、水素全体としては電気的にプラスとマイナスが釣り合っていますから、電子の回って来ない外側はプラスの電気を帯びているはずです。そこに水の分子が引き寄せられてくっつくかというと、これがどうもくっつかないらしい。これはなぜかというと……よくわかりません。
 じつは、いま、「水素が表面にあっても水の分子が寄りついてくる」と書きかけて、あれ、そうはならないぞ、ということにふと気がついたんですね。水素が表に並んでいる分子といえば、「油」類の多くがそうです。でも油は水に溶けない。なぜだろう?
 水の分子が分子の表面の水素のプラスの電気に引き寄せられて寄ってくるとすれば、水の分子の酸素の側のはずです。そちら側がマイナスの電気を持っているのだから。そして、察するに、酸素の分子のほうが水素の分子よりも大きいので、相手の分子の表面に水素原子がずらっと並んでいたりすると、引っぱられてきても大きい酸素どうしが混み合ってぶつかりあってうまく水素とくっつくところまで行けないのではないかな、と思うのですが、やっぱりよくわかりません。
 ところで、さらに、すごく大きな分子があって、それがプラスやマイナスの電気を帯びていると、水の分子がそれに引き寄せられて、その分子のまわりを取り巻いてしまいます。そうすると、その物質は、水に完全に溶けてはいないのだけれど、完全に分かれることもないという「どろどろ」の状態になります。