猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

「腐る」ことが日常的に起こった時代の思想

 上のところまで書いて、冷蔵庫に入れておいた作り置きのごはんとおかずを温めて飯を食いました。そこであらためて考えてみれば、17世紀って、冷蔵庫がなかったんだよなぁ。防虫剤も、除湿装置も。だから、ロックがこれを書いた時代、「あとで使おう(食べよう)と思って置いておいたら腐った(または虫に食われた)」というできごとは、今日よりずっと日常的だったはずです。そういう点で、ロックの議論には、現在より現実感があったのかも知れません。
 ところが、その後、時代は進んで、冷蔵庫も冷凍庫もできた。貨幣の「本体」は銀行などの記憶媒体に記録されている数字になってしまい、貨幣は絶対に錆びなくなってしまいました。こうなると「財産」が腐るという事態のほうがむしろ特殊な事態です。いや、「財産」のデジタル化で、管理が悪くてハードディスクが錆びて動かなくなったとか、バックアップまで含めてメモリが飛んだとか、ウィルスやワームでデータが全滅したとか、そういう別の脆弱性は抱えこんでしまったのですが。