猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

遠心力

 これに対する答えの一つは「地球に落ちる力と遠心力とが釣り合っているから」というものです。
 遠心力というのは、回転しているものを遠くに飛ばそうとする力です。
 私が「遠心力」のすごさを実感したのはたぶん小学校1年生のときだったと思います。給食の片づけをしに給食室に向かっていると、向こうから高学年の大きいお兄ちゃんがやって来ました。給食用のバケツを持っています(あれ……「バケツ」って言ったのでいいんだよね?)。そのバケツには給食で余ったみかんが入っていました。お兄ちゃんは私の前でそのバケツを片手でぐるんと振り回して一回転させました。小さかった私は、もちろんみかんが落ちるものと思っていましたが、バケツが逆さになったのに、みかんは落ちてきません。いや〜、5年生とか6年生とかのお兄さんはやっぱりすごい!! ――と思いました。だって小学校1年生の子どもから見ると、大人というのはまったく別の存在だし、高学年のおにいさんおねえさんだって大きくて強そうでこわそうで、やっぱり格別の存在に見えるわけです。でも、それはおにいさんがすごかったというより、遠心力の作用だったのですね。おにいさんは……廊下でみかんの入ったバケツを振り回したりすると危ないからやめておいたほうがいいよ、と、いまになってみれば、ただそう思うわけです。
 ……どうでもいいような話ですが。
 ところで、このばあいは、その遠心力はお兄さんがバケツを振り回した力で起こったものです。では、月は何によって振り回されているのでしょうか?
 現在、いちおう定説になっているらしいジャイアント・インパクト説によると、月は、できたばかりの地球に火星ぐらいの大きさの原始惑星が衝突してはじき出された破片の一部が集まってできたことになっています。そのとき月をはじき出した勢いがいまも続いていて、だから落ちてこない。それどころか、じつはわずかに遠心力のほうが勝っていて、月はいまも地球から遠ざかり続けているということです。
 でも、いまもその遠心力が働き続けているということは、40億年前に投げ出された勢いがいまも続いているということです。では、なぜ40億年も勢いが止まらないままなのでしょうか?
 答えは「月を止めるものが何もなかったから」ではないかと思います。