猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

仕事の話

 さて、書き込みがいきなり1か月近く空いたのは、例によって仕事の山にぶつかったからですが。
 では、その「山」がどうしてやってきたかというと――。
 あるプロジェクトで、メンバーの一人がどうしても納期に間に合わせられなくなったので、その仕事を途中から私が引き継ぎました。私が引き継いだドキュメントを見てみると、一見、最後の整理の段階を残すだけで、ほぼ完成しているように見えた。それで安心してしまいました。
 ところが、実際に着手してみると、見かけとは裏腹に、それが凄まじく手間のかかる仕事だということがわかりました。完全にその人のやり方で途中までの作業が行われているので、それを完成の段階まで仕上げようとすると、その人が途中までやってきた作業をもういちどトレースして、少なくともそれまで作業が行われてきた手順を推定して、その先を続けるという作業が必要になる。しかも、前任者は、他の助っ人メンバーも加えて、非常に複雑な作業をしていたし、「自分ルール」みたいなのも作ってやっていたらしい。その「自分ルール」が明確ならばまだいいのですが、それもはっきりしないので、こちらで探り出さなければならない。それをトレースしてやり直すとなるとたいへんな手間です。
 前任者の意向を確認して解決するならばいいのですが、前任者の指示自体が不明確でよくわからない。たとえば、「この点に注意してやってください」という指示が来るのだけど、私が前任者の仕事を検討すると、とてもその点に注意してこれまでの作業が行われていたとは思えない。どうも同じことばを使って別の概念を表現しているらしい。そういうところがあって、よけいに判断に迷う。
 音を上げて「これはできないからやっぱり前任者にやってもらってください」と表明したのですが、もちろんきいてもらえるわけもなく、けっきょく、一部は凄まじい手間をかけてその作業をやり、それをやっていたらとても納期に間に合わないので、一部は途中までできているものをバラして最初から自分でやり直しました。それですべての予定がほぼ一週間後ろにずれた、というわけです。
 人の仕事を引き継ぐというのがどんなにしんどいかということを身に沁みて感じました。
 やり方がマニュアル化されていて、共通の手順が明確なものならばこういうことは起こらないのでしょう。でも、依頼からその「成果物」の完成までは、各メンバーの裁量で、そのメンバーがよいと思った方法で仕上げて、それを最後に持ち寄って調整するという方法で進めていたプロジェクトだったので、それぞれのメンバーでやり方が違う。なぜそうしたかというと、各自がいちばん得手とする方法で取り組んだほうが、けっきょくは早く、しかも質の高いものができるという判断からでしょう。全体を見れば、それでプロジェクト管理はうまくいったと思いますが、その人の仕事だけが暗礁に乗り上げてしまったのですね。
 あとで、コンサルティングのスキルを持つ人にきいてみると、「人の仕事を途中から受け継ぐのは難しいですよ」と言われましたが。
 ほんとに大きな教訓になりました。