猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

佐藤賢一『英仏百年戦争』集英社新書、isbn:9784087202168

 教科書的には、1337年に始まり、1453年に終わったとされる、イギリスとフランスの「百年戦争」の歴史について書かれた本です。
 著者の佐藤賢一さんは、作家ですが、この本に出ている経歴によると、東北大学の文学系の大学院の課程(たぶん博士課程)を最後まで修められたそうですから、アカデミックな方法を身につけた歴史家でもありますね。思い出してみると、私は佐藤賢一さんの『カペー朝』とか『ダルタニャンの生涯』とかの歴史書は読んでいるのだけど、小説のほうは読んだことがない。うむむ……。
 イギリスは、この百年戦争まではフランスにも領土を持っていた。時代によって広くなったり狭くなったりはしたけれど、ともかくフランスにも領土があった。しかし、この百年戦争で(ドーヴァー海峡をはさんで対岸のカレーを除いて)フランス側の領土をすべて失った。その結果、イギリスは、その後、いまと同じような島国としての歴史を歩むことになった。それがとりあえずは百年戦争の意義だと言っていいでしょう。
 でも、著者は、「イギリス人はシェイクスピア劇のおかげで百年戦争にはイギリスが勝ったと思っている」という話を紹介したあと、いや、そもそもそれがほんとうに「イギリスとフランスの戦争」だったのか、と問い直すところから議論を始めます。