猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

日本中世史

准摂関家としての足利将軍家

というタイトルの論文が『史学雑誌』(第115編第2号)に出ていたので、読んでみた(著者は石原比伊呂さんという方)。 足利義満が天皇家(「王氏」)から「王権簒奪」を図ったという話は、今谷明さんの『室町の王権』(isbn:4121009789)以来、いろいろと出…

森茂暁『南朝全史』(講談社選書メチエ、isbn:4062583348)

南北朝時代の一方の「主役」である南朝の歴史を、南朝の天皇家になる「大覚寺統」の成立から、南北朝「合一」後の南朝の後裔が室町幕府に対して起こした「後南朝」運動まで含めてまとめた本である。 小学校から、南朝について学校で教わる内容にはアンバラン…

神田千里『土一揆の時代』(吉川弘文館歴史文化ライブラリー、isbn:4642055819)

昨日採り上げた『島原の乱』の著者 神田千里さんの前著。この本では、「土一揆」というものが登場し始めた時期(1420年代、正長年間)から、それが変質し、やがて江戸時代の「百姓一揆」へと姿を変えていく過程が、主として京都周辺の状況を中心に描かれてい…

神田千里『島原の乱』(中公新書、isbn:4121018176)

「島原の乱」は、飢饉の年に重税を課し、納めきれない民衆を残酷な刑に処したりしたために、民衆の不満が、たまたま宗教反乱というかたちで噴き出した事件だったのか? そうではないと著者の神田さんは言う。それは、「戦国時代」の最後を飾る騒乱事件であり…

撰銭問題

ところで、昨日、最初のほうで「貨幣は存在するのに統一的な管理者がいないために発生する経済問題」と書いたのは、黒田基樹『戦国大名の危機管理』(この本については、id:r_kiyose:20051002, id:r_kiyose:20051026, id:r_kiyose:20051027で触れた)で「撰…

黒田基樹『戦国大名の危機管理』のつづき

戦国時代の村は、飢饉や自然災害と闘わなければならず、貨幣は存在するのに統一的な管理者がいないために発生する経済問題と闘わなければならず、水争いや土地争いで隣村と闘わなければならず、しかも隣国の大名にいつ土地を荒らされるかも知れないという立…

黒田基樹『戦国大名の危機管理』に関して触れた点のつづき

前に、人間を生かすための権力というのだったら、中世から権力はずっと生権力だったのでは、と書いたのだが、大澤真幸さんの『文明の内なる衝突』(NHKブックス)を読んでみると、どうもそうではないようだ。ここでいう「権力」というのは、いわば人間に…

黒田基樹『戦国大名の危機管理』吉川弘文館、2005年 isbn:4642056009

少し前に、職場からの帰りに電車に乗るために駅まで行ったのに、ホームまで上がる元気が出ず、思わず駅近くの書店に寄って衝動買いしてきた本のうちの一冊だ。 「戦国大名の危機管理」というタイトルだけど、どっちかというと「村の民衆と戦国大名」みたいな…

「網野史学」について

買って以来、ずっと読んでいなかった(本棚の上のほうにしまっておいたら、新潟県中越大地震のときに落ちてきたのだ)網野善彦『日本中世都市の世界』(筑摩書房)を読む。本が出たのは1995年だが、一般向けの代表作『無縁(むえん)・公界(くがい)・楽(らく)…