猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

「統一理論」といろいろ昔の話

 現在のところ、電磁相互作用と、原子核ベータ崩壊させる「弱い力」が昔は一つだったという「電弱統一理論」が成功しています。そこで、次に、電磁相互作用と「弱い相互作用」が一つだった時代よりもさらに昔には、その「電弱統一」相互作用と、原子核を一つに結びつける「強い力」を加えた三つの相互作用が一つだったのではないかということが構想されました。それを説明する理論として「大統一理論」も成立しているようです。そうなると、こんどは「電‐弱‐強」相互作用と重力相互作用が昔は一つだったのでは、という疑問が出てくるわけですが、重力を含む統一の理論はまだのようで、それを説明するために「超弦理論」とかが提案されているようです。
 私が大学で宇宙論を習ったときには「電弱統一理論は成功したが大統一理論は成功しておらず、重力を含む統一理論が仮にあるとしても人類には理解できないかも知れない」ということになっていたのですが……世のなかは進歩したものです。だいたいそのときは「陽子や中性子クォークからできているという説もある」だったしな。「電弱統一」理論を作り上げたのはワインバーグとサラムだということはそのときに習いました。でも、このうち「サラム」がアラビア語で「平和、平安」を意味する「サラーム」だということは、じつはこの文章を書くまで気がつかなかった。ウィキペディアを見てみるとパキスタン出身の科学者だということです。
 ところで、「昔は電磁相互作用と弱い相互作用が一つだった」とか「そのさらに昔には電弱相互作用と強い相互作用も一つだったのでは?」とかいうときの「昔」とは何か? それは、宇宙ができてすぐぐらいの非常にエネルギーの高い状態のことです(ある一定の空間のエネルギーが高いと普通は温度も高くなりますから、「非常に高温の状態」と言ってもいい)。だから、べつに「昔」には限らず、これからでもそういう「非常にエネルギーの高い状態」が再現すると、そこでは「電磁相互作用‐弱い相互作用」の区別がなくなり、もっとエネルギーが高い状態になると「電磁相互作用‐弱い相互作用強い相互作用」の区別がなくなることになります。だから、粒子にエネルギーをいっぱい与えて衝突させる加速器の実験でその「非常に高いエネルギー」が再現できれば、現在の地上でもその区別をなくすことができるはずです。私が大学で宇宙論を習ったときには「それを検証しようとするとめちゃくちゃに巨大な加速器を作らなければならないので実際には不可能」と教わったのですが、『宇宙論I』の口絵によると、現在ではクォーク原子核にまとまる前の高エネルギー状態まで加速器で再現できているということです。……世のなかは進歩したものです。