猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

自由論

「覇」・「権」の思想

前にヘゲモニーの話をしたときに「覇」ということばを使った。この「覇」というのは、その人に正しい資格があるとは認められていないのに、力を使って天下を動かそうとするひとというイメージがある。正しい資格を認められて天下を動かすのは「王」であって…

社会主義失敗の原因

社会主義がなぜ失敗したかというと、それはいろんな理由があるのだろう。その思想自体にもムリがあったのかも知れない。だが、高邁な理想を掲げる思想にはある程度の「ムリ」はあるものだ。もし「ムリ」がないのならその理想はすでに実現しているだろうから…

ヘゲモニーという考えかた

ふと思いついたこと。 そういえば、リベラルにせよ、リバタリアンにせよ、コミュニタリアンにせよ、自由とかリベラリズム(自由主義……井上達夫さんによると誤訳らしいけど)とかについて書かれたもので出てきた覚えのないことばがこの「ヘゲモニー」だ。そう…

井上達夫『他者への自由』創文社(isbn:442373091x)

ノージックに続けて読みはじめたときにはノージックより読みやすいと思っていたけれど、後ろのほうまで読むとあんがい難しかった。チェコスロバキア(まだ一つの国だったころ)の大統領のハヴェルの演説の話とか、マルクス‐レーニン主義とアナーキズムの批判…

ノージック『アナーキー・国家・ユートピア』

やっと最小国家ができるところまでたどり着いた……ふぅ……しんどかった。 ノージックの議論をちゃんとたどれているか、はなはだ自信がないのだが、たぶんこんなところじゃないかと考えている道筋は: 諸個人が自分の身の安全とか自由とかを守るために自発的な…

リバタリアン vs コミュニタリアン

私はもともとでかい声で主張しないと権利が通らない(偏見かも知れないけど)アメリカ的自由市場主義が嫌いで、したがってリバタリアニズムが嫌いだったのだけど、ノージックの『アナーキー・国家・ユートピア』を読み進む(……って一か月前から読んで100ペー…

「よく生きる」ことを強制する権力

「ソクラテスの弁明」を読んだのはずっと昔で、もう何が書いてあったか確かではない。ともかく、「ソクラテスの弁明」か「クリトン」かには、「ただ生きる」のではなく「よく生きる」ことが人間にとって重要だというような話が出てきたのだったと思う。これ…

生権力

前に書いてから『自由を考える』を読み直して、たしかにここに出てくるような意味の「生権力」は近代のものなのかなと思い直したりもしている。前近代の権力が「生権力」であったかなかったかというのは、この本の趣旨には何も関係がないけど……。 でも、伝統…

東浩紀・大澤真幸『自由を考える』(isbn:4140019670)

なんか、東さんご本人(id:hazuma)にとっては心外かも知れないけど、正直な感想を言うと、東さんの文章って対談のほうがわかりやすくておもしろいな〜。この本は『動物化するポストモダン』のあとに書かれているのだけど、『動物化するポストモダン』でよく…

自然状態

ノージックの『アナーキー・国家・ユートピア』に取りかかったのだが、現在まだ最初の数ページしか読んでいない。 その最初の部分が「自然状態」の話から始まっている。1970年代になって、社会契約論の基礎的発想をたどり直しているのというのが印象的だ。も…

藤原保信『自由主義の再検討』岩波新書(isbn:4004302935)

この本を読んだのは3回めだ。最初は出た直後に読んだ*1。社会の雰囲気も冷戦構造崩壊後の楽観的な時期だったし、私自身もいまよりは若かったので、わりとこの本の理想主義的なところに共鳴した。2回めは最近で、ホームページに自由についての議論を書くまえ…

自由を論じることの難しさ

というわけで、今回のホームページ更新では、「自由を論じるための準備作業」という文章を載せた。これを書くのにすごい苦労した。だから、このテーマについていまは考えたくないという気分もないことはないのだけど、でも、考えていることを書いてみようか…