猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

軍事

井上昌巳『一式陸攻雷撃記』(光人社NF文庫、isbn:476982212x)

昭和18年(1943年)7月、新たに編成された第一航空艦隊の航空部隊の一つとして編成された「七六一空」の奮戦の記録である。この「航空艦隊」は、「艦隊」とは名ばかりで、太平洋各地の島の基地航空隊の連合部隊だ。 私がこの本を買ったのは一式陸攻(一式陸…

碇義朗『戦闘機「飛燕」技術開発の戦い』(光人社NF文庫、isbn:4769821379)

以前にも取りあげた(id:r_kiyose:20050726)陸軍の三式戦「飛燕」の誕生から敗戦までを技術面を中心に追った本である。液冷の三式戦のエンジンを空冷につけかえた五式戦の開発やその戦果についても1章が設けられている。 それだけではなくて、碇さんの本が…

吉田俊雄『戦艦比叡』光人社NF文庫、isbn:4769823452

高速戦艦比叡の誕生から沈没までを描いた戦記、というか軍艦の評伝である。 比叡が属する金剛型は、ワシントン・ロンドン軍縮条約下で日本が保有していたいちばん古い型の戦艦だ(各艦のあいだに微妙な違いはある)。しかも戦艦群のなかでは太平洋戦争で最も…

碇義朗『戦闘機「隼」』のつづき

たぶん、当時の中国(蒋介石政権)の戦闘機やソ連の戦闘機を相手にするかぎり、九七戦がいちばん適した戦闘機だったのだろう。そこでの成功体験が隼の開発の「壁」になってしまった。九七戦の「軽さ」に慣れた戦闘機乗りは、隼の操縦感覚の「重さ」に抵抗を…

碇義朗『戦闘機「隼」』光人社NF文庫(isbn:4769820992)

大ざっぱに言うと、前半は中島飛行機技師長の小山悌(やすし)を中心とした帝国陸軍の一式戦「隼」の開発物語で、後半が隼の戦記である。 興味深かったのは隼の開発物語だ。性能上も優れ、戦果も挙げている現役機があると、後継機の開発は苦労する。隼のばあい…

松本良男・幾瀬勝彬『秘めたる空戦』光人社NF文庫(isbn:4769821360)

陸軍の三式戦「飛燕」の搭乗員だった松本良男の手記を、作家の幾瀬勝彬が整理してまとめた戦記である。 この本を読んで印象的だったのは戦闘時の心理状態の記述だ。戦闘中にこそ論理的に考えて判断することが求められるし、実際にすぐれた戦闘員は、隊形や相…

鈴木五郎『グラマン戦闘機』光人社NF文庫(isbn:4769824548)

零戦の敵手だったグラマンF6F「ヘルキャット」と、その前のF4F「ワイルドキャット」など、第二次大戦期のグラマン社の艦上機についてまとめた本。 零戦の開発が懸命な雰囲気を漂わせた国家的プロジェクトと感じられるのに対して、ワイルドキャットやヘルキャ…

佐藤次男『幻の潜水空母』のつづき

ところで、この潜水空母にどうして14センチ砲と魚雷発射管が必要だったのだろうか。アメリカ東海岸やパナマ運河まで出かけていって奇襲攻撃をかけるならば、それまでの行動は隠密に行わなければならないはずだ。よほど有利な条件がないかぎり、魚雷攻撃をし…

佐藤次男『幻の潜水空母』光人社NF文庫(isbn:4769823134)

日本帝国海軍が造った「潜水空母」伊400潜型についての本である。 伊400潜型は、潜水艦に攻撃用の航空機を積んでアメリカ合衆国本土を攻撃しようという壮大な意図によって造られた。この本の一つの眼目は、その計画が開戦時の連合艦隊司令長官山本五十六によ…

大内建二『護衛空母入門』光人社NF文庫(isbn:4769824513)のさらにつづき

日本のばあい、隼鷹・飛鷹以外の「鷹」型空母(大鷹、雲鷹、海鷹、冲鷹、神鷹)は、まず海陸軍の航空機輸送に活躍したようだ。でも、この本を読んでみると、大鷹、雲鷹、神鷹は船団護衛中に沈んでいるし、海鷹も船団護衛には活躍しているので(冲鷹は航空機…

大内建二『護衛空母入門』光人社NF文庫(isbn:4769824513)のつづき

日本の商船改造空母は、あくまでいちおう艦隊行動に随伴することを目的に造られたので、最初はこの本が隼鷹・飛鷹を除く「鷹」型空母を「護衛空母」に分類していることには違和感があった。でも、この本によると、1943(昭和18)年11月に海上護衛総司令部が…

大内建二『護衛空母入門』光人社NF文庫(isbn:4769824513)

第二次大戦中に米英海軍に存在した「護衛空母」という艦種について、その誕生から終焉までを紹介した本。なお、この本では、日本の「鷹」型空母のうち、艦隊空母として活躍した隼鷹・飛鷹を除く艦と、いわゆる「陸軍の空母」もここに含めている。 護衛空母と…

『奇蹟の雷撃隊』光人社 isbn:476982064x

-- ネタバレありです -- 第二次大戦期に「戦闘機の坂井(三郎)」と並び称された雷撃機のエースだった森拾三さんの日中戦争・太平洋戦争の回想録だ。 この本を読むと、日本の航空隊にとっての日中戦争(1937年〜)というのの意味は軽くなかったんじゃないか…