猫も歩けば...

― はてなダイアリーより引っ越してきました ―

2009-01-01から1年間の記事一覧

なぜ「神様の権威」が必要なのか?

ところで、都市的な人間関係が崩れ、都市の枠を超えた人間や物のつながりがたくさんできてくると、どうして「神様の権威を頼りにした絶対的支配」が必要になるのでしょうか。 考えられる答えの一つは「共同意識」や信頼感の有無だと思います。 一つの都市の…

結び と 次回予告!

ああ、こんなに長く書いたのに、話がロックまで戻らなかった。どうしよう……。 いや、「どうしよう」って言ったって、まあ、続けるか、中断するかどっちかしかないわけだから……続けます。 次で「キリスト教と政治支配(統治)」という問題を扱ったあと、「ロ…

「幕藩体制」の綻び

そして、その流れで考えると、江戸時代の「幕藩体制」も、できてから200年ほど経つといろいろと綻びてくるわけです。 普通は「ペリー来航」を中心とする「外圧」の影響で説明されるけれど、たぶん、「外圧」がなくても「幕藩体制」は弛んでいたのではないか…

突飛な思いつき――ローマ帝国は「幕藩体制」だった

しかし、「面積が広くなりすぎた」というだけではないのかも知れません。 支配領域が大きくなったのはローマがまだ「共和制国家」の体裁を保っていた紀元前2世紀ごろからです。でも、「共和制国家」の末期から、その「共和制国家」の枠内で皇帝制度が動き始…

帝国が大きくなりすぎたから?

どうしてそうなってしまったのか? 「帝国が大きくなりすぎたから」というのがとりあえずの答えなのでしょう。 五賢帝の3人めにあたるハドリアヌス帝は、その治世のあいだ、帝国内の各地を頻繁にめぐって過ごしました。また、五賢帝の最後のマルクス・アウレ…

「絶対的な神様」の権威が必要な時代へ

さて、そのように、実質はともかく、形式的には「共和制の枠内の称号・役職」として出発したローマの皇帝制も、3〜4世紀のころには「専制」の皇帝制を採用しなければ収まりがつかなくなってしまいます。自分が神様だと言って崇拝を強制した皇帝もいますし、…

「皇帝」は実質「大統領」だった?

さて、前回、ローマ帝国の「皇帝」が、もともと「共和制国家」( res publica )の枠内の称号・役職名として名のられたものだったということを書きました。ローマ帝国に「皇帝」が生まれたことは、「共和制国家」の枠を破る事件ではなかったわけです。 とこ…

ローマ帝国の「皇帝」をめぐって

あいかわらず「承前」で話が続きます。 ジョン・ロック/加藤節(訳)『統治二論』の後編(第二論、通称「市民政府論」)の話――だったはずなんですが、前回、「統治」体制をギリシア都市世界の「自由」と東方巨大王国の「専制」に分ける発想がどこで生まれたか…

「帝制」の成立

さて、この「一つの役職には必ず二人以上を任命する」という制度にも一つだけ例外があったそうです。それが「独裁官」 dictator という制度です。都市が危機に陥ったときに限り、しかも期間を厳しく限定して、一人に権力を集中するのです。つまり、「独裁」…

「共和制」ローマの人事制度、そして、カイシャの「?」な話

そして、その都市ローマは、「王制」的なものを極度に嫌う性格のある都市でした。 都市ローマはもともと王制都市として出発しました。しかし、悪政を行う王が出たので、市民が王を追放したとされています。そして、それから、王制が復活しないように「政治」…

ローマとはどういう国家だったか

この「自由な都市」と「専制王国」という意識がローマ共和制国家〜ローマ帝国を経て受け継がれたということが、事態をさらにややこしくしているように私には思えます。 ローマは後に「帝国」になり、中近東からスペインまで、イギリスからアフリカ北海岸まで…

二つの「君主制」

「自由」なギリシア諸都市の「政治」(=都市運営)体制の一つのやり方として、権力を一人に集中する「君主制」という方式がある。他方で、ペルシアやエジプトなどの東方の国家の、人民を王の「持ちもの」としてこき使う「専制」的な王制がある。ロックはこ…

「君主制」をめぐる議論とローマの共和制国家

えーと、引き続いて、いちおうジョン・ロック/加藤節(訳)『統治二論』後編(第二論)をめぐる話なんですが、前回に続いて今回もロックとはあまり関係のない話です。また、今回は、ラテン語を勉強するときに読んだ本に書いてあったはずのことを大幅に援用し…

「自由」なギリシア 対 「専制」の東方諸王国という図式

もし「自由」なギリシアと「専制」的なペルシアやエジプトという図式がギリシアのもともとのものでないとすると、それはどこでできのでしょうか。 詳しいことはわからないけれど、紀元前5世紀ごろに、強大なペルシア王国に対してアテネやスパルタ(「スパル…

ところで「専制」対「自由」の構図は歴史的事実なのか?

ところで、現実の古典時代ギリシアの人たち自身がいつからこのような意識を持っていたのか? いや、そんな意識を持った古典時代ギリシア人が現実にどれだけいたのだろう? それは私にはよくわかりません。もしかすると、現実には、「自由なギリシアと、不自…

「専制」の存在

しかし、もちろん古典時代ギリシアと同時代の世界にほかの支配体制が存在しなかったわけではありません。 古典時代のギリシア人がよく知っていた世界にも、ペルシアやエジプトなどの王国があり、同じギリシア人の世界にも、後にアレクサンドロス(アレクサン…

「政治」体制の伝統的な三分類

古典時代のギリシア以来、政治体制は、君主制・貴族制(または寡頭制)・民主制に分けるのが普通です。ロックやルソーの時代まではその区分が使われています。支配者が一人のばあいが君主制、支配者が少数者のばあいには貴族制、支配者が多数者または国民(…

「自由」対「専制」という図式はどこでできたか?

しばらくすばる望遠鏡の系外惑星撮影成功に関する話を続けました。今回は、ジョン・ロック/加藤節(訳)『統治二論』後編(通称「市民政府論」)に関係する話に戻ります。今回は: 社会契約論は「都市化した社会の政治」を構想する http://d.hatena.ne.jp/r_k…

惑星ができる過程の複雑な事情

太陽系の木星や土星自体が、なぜもっと内側まで落ちて「ホット・ジュピター」にならなかったか自体が、よくわかっていないそうです。原始惑星系ができていく過程は: http://subarutelescope.org/Pressrelease/2004/04/18/j_index.html#fig1 に出ています。…

巨大惑星はなぜ中心星の近くまで「落ち」ない?

もし、巨大惑星ができたころに原始惑星系円盤が残っており、それが切れ目のない円盤だったならば、巨大惑星は中心星のすぐそばまで落ちて「ホット・ジュピター」になる。ということは、巨大惑星が「ホット・ジュピター」になっていないのは、円盤に切れ目が…

「巨大惑星の投げ出し」という「別解」

「別解」を考えてみることもできます。巨大惑星が形成されたのは、現在の遠い軌道ではなく、もっと中心星に近いところだった。たとえば太陽系の木星とそう変わらないぐらいの距離の場所だった。ところが、他の天体との引っぱり合いの結果、惑星系の外側まで…

「帯状の輝き」が地上を照らす世界

ということは、フォーマルハウトや恒星 HP 8799 やがか座ベータ星の周囲の「塵の円盤」にある塵の分量は、太陽系の小惑星帯よりもずっと多い。たぶん、水星と金星と地球と月と火星がぜんぶ「塵」に戻った分量よりずっと多いのではないでしょうか。 フォーマ…

遠方巨大惑星のある惑星系はどうやってできたか?

さて、では、気を取り直して、外側に巨大惑星が回り、その内側に幅の広い「塵の円盤」があるという惑星系はどのようにできたかを考えてみましょう。まず標準的なモデルを考えてみます。 最初に塵とガスでできていた原始惑星系円盤が、ある段階の「微惑星」を…

「塵の円盤」をめぐる誤解

フォーマルハウトの惑星と HR 8799 の惑星は、どちらも、中心星(恒星、自分で輝く星)が「塵の円盤」をいまも持っているということです。 私は、前の日記を書いたときまで、「塵の円盤」というのは「原始惑星系円盤」がそのまま残っているものだと誤解して…

「遠方巨大惑星」から惑星系の成立を考えてみたり

前回の「新発見の系外惑星」のお話の続きです。

新発見の系外惑星は「近頃の若いやつ」らなのか?

だから、フォーマルハウトの惑星やHR 8799 の惑星系では、太陽系ではあり得ないほど中心星から離れたところで巨大惑星が形成されたわけです。それだけ原始惑星系円盤に含まれている物質が多かったということでしょうか。 「原始惑星系円盤は時間が経つと消滅…

なぜそんな「遠く」に巨大惑星があるのか?

さて、では、中心星から海王星軌道の数倍も離れたところに巨大惑星が回っている、しかも、その内側には「塵の多い円盤」が存在するという発見の意味を考えてみましょう。 惑星系形成の理論だと、塵とかガスとかが多い「原始惑星系円盤」があって、そのなかで…

「半月」状態の惑星をよく見つけた!

昨年11月に発見されたフォーマルハウトの惑星とペガスス座 HR 8799 の惑星には共通点があります。それは: ・ 中心星(恒星)の周囲に塵(土ぼこりのようなもの)の多い「円盤」があるということ; ・ 海王星軌道のずっと外側を回る「遠方の惑星」であるとい…

新発見の系外惑星について

昨日の話の続きです。

「コールド・ジュピター」のある惑星系

さて、ハッブル望遠鏡が発見したフォーマルハウト(みなみのうお座、一等星、秋の南空で目立つ星)のばあいも、今回の HR 8799 のばあいも、大きい塵(ダスト、土ぼこりみたいなもの)の円盤に囲まれている恒星でした。 フォーマルハウトの惑星が中心星(フ…